ここから本文です。 現存する書物の中で最高峰の青春小説。全世界で六千万部以上売れ、今なお年間二十五万人以上の新規読者を獲得する本書は、チャップマン、ヒンクリー、最近では市橋被告といった逸脱者が愛読していることからも明らかなように、狂っています。我々の狭い読書観からすれば、とても六千万部売れるとは思えない本です。しかし売れた。読まれた。語られた。この現実がある限り、青春人間にとっての応援の書、反逆の書として君臨し続けるでしょう。 本書の一編目である『バナナフィッシュにうってつけの日』が、物語制作者に与えた影響を今更ここで語るのも野暮なものです。『バナナフィッシュにうってつけの日』の影響下にある作品の何と多いことか。「若いうちに読んで下さい」という触れこみの物語は多くありますが、本作以上にその言葉が当てはまるものを佐藤は知りません。坂口安吾『夜長姫と耳男』や、安達哲『さくらの唄』のように、本当