■日本美術史のツッコミ所 面白い! 素朴絵とは、あくまで著者の造語で、今どきの言葉で言えばユルい絵とでも言うのだろうか。本を開くと、日本美術の世界に紛れ込んでいたユルい絵が、次々と登場する。 室町時代後期に描かれた「かるかや」という絵本の挿絵は、かなりテキトー。来迎する阿弥陀や菩薩の背中から、蓮の花が一輪挿しのように、にょにょっとマヌケな感じで生えている。 「伊勢参詣曼荼羅(まんだら)」「玉垂宮縁起」に描かれた太鼓橋も、えたいの知れない不思議な形で、いったいどこから見たらこんなふうに見えるのかと言いたくなる。昔の日本人は建物を描くのがあまりうまくなかったようで、「洛中洛外図屏風(びょうぶ)」の二条城など、かなりガタガタだ。「築島物語絵巻」の建物には、壁がないのに窓があったりする。 これらの素朴絵は、ユルく描こうとしたというより、技術的に未熟なため結果的にユルくなってしまったものばかり。日本