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ブックマーク / d.hatena.ne.jp/tatsu2 (9)

  • 「秒速5センチメートル」の小骨 - subculic

    散歩の道すがら、近所の公園に新しく桜の木が植えられていることに気づいた。何年かすると、公園の遊歩道がりっぱな桜並木になるのだろうか。密かな楽しみが増えた。 すっかり夏めいた季節になってしまったが、桜を眺めて思い出すアニメは決まって『秒速5センチメートル』(2007)だ。とくに電車の音をバックに花びらがはらはらと舞い落ちる様など、恰好の「秒速風景」。そういう時は心に住みついた作品になってしまったなあ、と感慨に浸ってみたりする(だれにでもあると信じたい)のだけど、考えてみると妙な話。現実の桜の花びらは秒速5センチで落ちてこないのに、『秒速5センチメートル』と思ってしまうのだ。ちょっとへんな現象である。 これが実は、喉の奥に引っ掛かった小骨だった。映画の公開当時は花びらが落ちるスピードなんて気にした事もなく、作中の貴樹よろしく「へえ、そうなんだ」と無邪気に頷いていた。しかし後にそうじゃない、もっ

    「秒速5センチメートル」の小骨 - subculic
  • 興津由佳にみる「SHIROBAKO」のキャラクター描写 - subculic

    万策尽きず、最終話も無事放映された『SHIROBAKO』。めでたしめでたし。そんな最終話で嬉しかったのは「興津さん」と皆から呼ばれている武蔵野アニメーションの総務・興津由佳が大活躍したことだ。彩り豊かな作の女性陣にあって個人的に一番注目していた興津さん。「残業をしない主義」「昔は制作だったらしい」など設定は散りばめられていたが、クリティカルなパーツを見せないキャラクターで、そこに興味の沸く“隙”があった。まず取り上げたいのは、興津さんのデスク周り。クールビューティな外見と事務的ではっきりとした言動は、シンプルで実用性重視の配置を想像させる。しかしよく観察してみると、ファンシーな小物が目を惹くチャーミングなデスク。「意外と可愛い一面を持つ」ことがデスク周りから伺えるのだ。ハート型のマウスパッドや花柄レースのコースターなど、こだわりの感じられる品がずらっと並ぶ。とりわけ目を惹くデスク右上に鎮

    興津由佳にみる「SHIROBAKO」のキャラクター描写 - subculic
  • 「SHIROBAKO」23話のラストシーンについて - subculic

    新人声優「ずかちゃん」こと坂木しずかにようやくスポットライトが当たった。『SHIROBAKO』第23話「続・ちゃぶだい返し」のラストシーンについて少し、書いておきたい。前回、しずかは自室で一人、テレビに出演しているフレッシュな声優をみながらビールをあおっていた。その様は胸に突き刺さり、痛々しかった。今回、まず憎い演出だなと思ったのは、キャサリンの妹・ルーシー役にしずかが選ばれるんじゃないかと視聴者に期待させている中、アルバイト先の居酒屋で映されるしずかのカットだ。静かに電話と取ったしずかの後ろは前回を引きずるように暗く、目の前は明るい。アフレコ現場にシーンを移す直前のこのカットは妙に引っ掛かった。どうして気になったかというと、23話のポイントは「誰と何を共有しているのか」だと思ったからだ。ラストシーンをみてみよう。宮森あおいは追加シーンのアフレコ現場に姿を現したしずかをみとめ、言葉にならな

    「SHIROBAKO」23話のラストシーンについて - subculic
  • オススメ「SHIROBAKO」資料群 - subculic

    ネット社会の恩恵か、専門用語や制作工程をフォローしてくれる公式サイト、リアルタイムで流れてくるアニメ関係者のつぶやき、インターネットは業界事情(そんな大げさなものじゃないけれど)を知るにありがたい存在だ。そこで『SHIROBAKO』をより深く、楽しめるものにしてくれる資料を紹介する趣旨のエントリーを書きたくなった。ネットで今すぐ読めるもの、P.A.WORKS関連の資料を中心にアニメを勉強する上で有用な、好きな書籍の紹介も兼ねて。ちょっと変わったアイテムもあるけれど、ご愛嬌ということでお願いしたい。 ■人狼制作日誌P.A.WORKS代表取締役・堀川憲司が制作担当だったProduction I.Gのアニメーション映画『人狼 JIN-ROH』ホームページ用制作日誌。アニメ制作にまつわる定番の読み物で、理知的な性格を反映したと思われる筆の滑らかさ、個性的なクリエイターたちと付き合っていく我慢強さ、

  • アニメ「カードキャプターさくら」ベストエピソード10選+1 - subculic

    アニメスタイルから関連書籍が発売されたこともあり、もう一度観直しておきたかったアニメ『カードキャプターさくら』。懐かしく視聴していたところ、そのアベレージの高さゆえ「私的なベストセレクションを作るなら」という一応の選考基準を設け、全70話の中から10選んでみたくなった。記事を書く機会がなかったタイトルなので、タイミングも丁度良かったのです。当時を振り返りながら読んで貰えれば幸い。カードキャプターさくら Blu-ray BOX1 (初回限定生産) by G-Tools ■第1話「さくらと不思議な魔法の」脚/大川七瀬 絵コンテ・演出/浅香守生 作画監督/高橋久美子長期シリーズとなる作の「マスター」。柔らかいデフォルメと優しい世界観を訴えるフィルムの手触り。ちょっとおかしな人間関係をチラリ。日常生活の中で不思議と出会い、魔法少女の誕生、そしてクロウカードバトル。後続作品の「影響元」として

    アニメ「カードキャプターさくら」ベストエピソード10選+1 - subculic
  • 「言の葉の庭」が送る「秒速5センチメートル」への返信――反射する輪郭は手紙となって - subculic

    「ねえ、秒速5センチなんだって」〈『秒速』から入り、結果的に『秒速』とは違う場所に出る〉パンフレットに寄せられた言葉は説得力を帯びていた。いまや有名なフレーズとなった台詞から始まる初恋の物語は、ゆっくりと水たまりに桜の花びらが落ちて、広がる小さな波紋をさえずるように開く。映画におけるファーストカット――ラストカットと同様に大切な意味を持つ作品のキーカットだが、振り返ってみれば、新宿御苑の池に広がる雨の波紋を映すカットから始まる『言の葉の庭』は、意図的に『秒速』を反射させていたのだと気付く。ふたたび『秒速』的な世界へ回帰したと、既視感あるファーストカットの重ね方をしておきながら、タカオとユキノの「雨宿り」を最後まで見届けたとき、ああ、たしかに違う出口へ辿り着いた物語だったと切ないダイアローグが反響する。そう、「手紙」というダイアローグによって。『秒速5センチメートル』における「手紙」は断絶と

  • ロボットアニメの兵器概念〜「コードギアス」 スラッシュハーケン論 - subculic

    2007年の放送からはや数年。派生作品も多く、未だ話題を作り続ける息の長いコンテンツ『コードギアス』、その中に登場する人型ロボット兵器・ナイトメアフレーム(以下KMF)についてのエントリー。実はKMFデザインが発表された当初「あまり格好良くないかも」なんて思っていた。オリジナルアニメなのだし、もっと華のあるデザインを目指してもいいのにな、だとか結構不満を漏らしていた気がする。しかし、動いている姿をみて進化の過程や概念が解ってくると手のひらをくるり。スペックや戦術など、メカニカルな部分への興味が沸いて止まらなくなった。そこで注目したのがKMFに標準装備されている武装・スラッシュハーケン。同じ谷口監督が参加していた『ガサラキ』のアイディアを素材とし発展させた機能だが、ワイヤーアクションと投擲アクションを合わせた特性が魅力的で、時に忍者的なアクションも可能にする多様性、作中“最優”の武装ではない

  • 「中二病でも恋がしたい!」中二病の消失点とは――“不可視境界線”ホリゾンタル・ライン(水平線) - subculic

    アニメーション「爆ぜろリアル! 弾けろシナプス! バニッシュメント・ディス、ワールド!」不覚ながら感動してしまった。恥ずかしい文言が効力を持ち、画面へ描き出されるなんて。『中二病でも恋がしたい!』は徹頭徹尾、想像とリアルの境界を探っていく作品だった。寝ることが趣味で“夢見がち”を行動で示すくみん先輩だとか、丑三つ時に大人のおままごとに興じる妹・夢葉、そして“普通”に戻ってしまった六花。その答えを「不可視境界線」に委ねる形で締め括りとなっている。何度も繰り返し画面に映されるホリゾンタルライン(水平線)が不可視境界線と交わり、同線となって描かれるイメージ、印象深いところだが、水平線に付き物と言えば、消失点である。ご存知、消失点とは遠近法(パースペクティブ)の基準となる点のこと。目線の高さによってアオリや俯瞰が発生するのだけれど、消失点を以って中二病を考えると、まことしやかに面白い。勇太は自分が

  • 「桐島、部活やめるってよ」をもう一度観るために - subculic

    映画方々で話題になっていた映画。原作未読、予告も見ずに劇場へ行った。「繰り返す金曜日」「多視点」「人気者」といったキーワードが浮かび、知らず没入してしまう作品だった。もう一度観るときのために、箇条書きでメモ。マスターショット(全体を映し、立ち位置を把握させるショット)では視線誘導外の“隅”が面白い。学校というロケーションの中で、まるで違う人間が放課後交差する場所、各々の動線。「桐島」なる画面外の物語に輪郭ができたとき想像する、金曜日の桐島、木曜日の桐島。“桐島的”な記号と菊池宏樹、キャプテン「好きである事とは何か」と青春真っ只中に問いかけるわかりやすさに反し、苦悩する高校生に(バドミントン部の宮部実果など顕著だった)「わかるよ」と言ってしまいそうで、とても言えない窮屈さ。フィルムをみて何をわかったつもりになっているんだとメタフィクショナルに責められそうな空気が息苦しくも目が離せない。中毒性

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