感染症、災害、原発事故。予期せぬ非常事態は、家族関係に何をもたらすのか。 新しい物事を生みだすのではなく、いずれおとずれる限界を前倒しで呼びよせているとしたら……。 家族のなかの最も弱い立場の人々と接してきた臨床心理士が、「家族におけるディスタンス」をめぐって希望の糸をたぐる。 コロナ禍にあってカウンセラーとして思うことを、6月以来いくつか文章にしてきた。緊急事態宣言解除後も、感染状況は好転せず長期化の様相を見せている。そんななかで新しく連載を始めることになった。さていったい何をテーマにしようかと思い惑っていたが、今の段階で考えていることをとりあえず具体的に書こうと決めた。 コロナによってもたらされるものがあるとすれば、新しい何かが生み出されるというより、これまですでに起きていた、芽吹いていた変化の加速化ではないかと思う。家族にあてはめればよくわかる。顔を合わせないようにして延ばし、猶予期