執筆者 田中 伸幸 東京工業大学大学院修了、電力中央研究所入所。主に化学物質の環境リスクについて研究している。料理は趣味で、週末は3食とも担当 調理と化学物質、ナゾに迫る 田中 伸幸 2012年8月9日 木曜日 キーワード:発がん物質 前回までのコラムで、調理排気には発がん性が懸念される多環芳香族炭化水素(PAHs)が含まれていること、そしてPAHsは脂質の多い食材を焼いたときに多く発生すること、さらに食材に直接、火が触れる調理ではPAHsの発生量が格段に多くなることを述べました。今回は、調理排気に晒されることによるリスクを定量的に考えてみましょう。 本稿で対象とするリスクは発がんリスクに限定します。また、ここで扱うリスクとは「生涯リスク」というものです。これは、ある集団がある物質にある時間、晒され続けた場合、その集団において生涯の発がんリスク(確率)がどれだけ高まるのか、という値です。我