「これは作家性のある原稿だから、そのつもりで扱うように」 編集者になって間もないころから、上司や先輩に時おりそう注意された。言われたのはそれだけのことがほとんど。「作家性とは?」と自問しながら、印刷所に原稿を渡すための指定と呼ばれる作業を進めた。 「作家の原稿だから、気をつけて扱うように」ではない。では、どのような人が、どのような思いで書いたものが「作家性のある原稿」なのか。いまあらためてこの問い掛けをしたいと考えたのは、日本テレビが制作・放送したドラマ『セクシー田中さん』が、漫画原作者の芦原妃名子さんの死という、あまりに不幸な結果を招いたことに関し、関係者にこの「作家性」ということについての根本のところでの認識が乏しいのではないかと思えたからだ。5月から6月にかけて、日本テレビと原作漫画の刊行元である小学館は、相次いでこの出来事の「調査報告書」を公表した。それぞれ91ページ、86ページも