今や日本の火葬率は99・999…%。断トツの世界一である。亡くなった人を火葬せず、土中に埋葬する土葬は、すでに消滅していると思っている人も多い。 そのような状況の中、近刊の書「土葬の村」(講談社現代新書)は、日本に残った最後の土葬の村をルポした。 土葬は古代・中世から千年以上続いてきたと言われている。ただ近年、急速に消滅しつつある。同書は、土葬の最後の光芒をつぶさに描いた日本の伝統的な弔いの挽歌と言える。 その最後の土葬の舞台は、京都府と奈良県の県境のエリアに奇跡的に残っていた。火葬場が近くになかったことや、先祖の墓や仏壇を守る後継者が近くの都市にいたこともあるだろう。そんな奇跡の村の話を始めたい。 最後の土葬 後醍醐天皇が立て籠ったという笠置山。京都府の最南端に位置し、奈良県と県境で接する笠置山にもほど近い山間部に、南山城村という集落がある。東西を流れる木津川の南側の奥深い渓谷である。