近年、論文が業績の中心となり、テクニカルな内容も増えている経済学の中で、「○○の世界」というタイトルの本はあまり見ないような気がします(社会学だとありそうですが)。 しかも、1972年生まれの著者にとってこれが初の単著。ずいぶん思い切ったタイトルだなと感じたのですが、そのタイトルにふさわしい内容とボリュームです。『あゝ野麦峠』の話から戦前の日本の職業紹介の制度を分析するという、「これが経済学の本なのか?」というテーマから始まり、「正規から非正規へと言われるが、実は正規雇用は大して減っておらず、自営が減って非正規が増えているのだ」という分析を中心として、日本の雇用を巡る問題を幅広く論じています。 第58回(2017年度)エコノミスト賞を受賞しているようにすでに評価の高い本ですが、評判通りの面白さだと思います。 目次は以下の通り。 序 章:本書の目的と構成 第Ⅰ部:制度の慣性 第1章:戦前日本