博士論文が審査を通過しました。タイトルは、『安吾戦争後史論 モダニズム以降の表現の可能性』です*1。興味のある方は、プロフィール欄のアドレスに連絡くだされば、データを送ります。 +++ ところで、僕が文学におけるモダニズムというときは、1920年代にマルクス主義や横光利一らいわゆるモダニストが参戦した、形式主義文学論争が念頭にあります。 そこで論争の主軸になった横光が試みたことは、大きく二点あります。まずは、作家が文学形式(言語手段)を自明なものとして何かを表現する時代に別れを告げ、そのような自明性にいまだしがみついている既成の文壇を批判したことが第一点。表現なんてそれこそ読者の取りようによって異なった解釈をされてしまうのだから、自分の思う通りに表現するのではなく(表現形式を無視するのではなく)、表現形式に注目せよ、ということが第二点。 この認識のもとに、言葉を駆使した様々な形式的実験がな