コラム 『日本映画の玉(ギョク)』 鈴木英夫<その14> 『九尾の狐と飛丸』をめぐって[前篇] Text by 木全公彦 和製フィルムノワールの名手である鈴木英夫と長篇アニメーションという組み合わせは、なかなか想像しがたいものがある。それも題材は九尾の狐とくると、意外な感じがする。わたしが聞いた鈴木本人の回想によると、日本動画製作の長篇アニメーション『九尾の狐と飛丸』(68)に鈴木が参加することになったきっかけは、大映の後輩である増村保造の依頼によるものだったという。 日本アニメーションの歴史を記述した信頼すべき資料「日本アニメーション映画史」(山口旦訓、渡辺泰著、プラネット編、有文社、1977年)によると、『九尾の狐と飛丸』は、元大映のプロデューサーであった中島源太郎が設立した日本動画が製作した唯一の長篇アニメーションで、「作品自体は地味な内容ながらクライマックスの玉藻と飛丸の戦いは