現在では想像もつかないが、テクノロジーの襲来によって漢字が厄介者扱いされていた時代。未来の漢字の姿をどのようにすべきかを本気で考え、不可侵の領域である字体まで踏みこんだ人々がいた。そんな方々が残した書籍(以下、造字沼ブック)を読み、臨書し、その想いを味わうお話しです。 第三冊は、『コンピュータに使う漢字の簡略化の限界』から、ミキイサム氏のデザインした「COM書体」を紹介したい(書籍ではなく年鑑に掲載されたの2ページより引用する)。 ▲『日本タイポグラフィ年鑑 1976』P.185より ...とても可愛い。ちょっと長体がかった素朴な佇まい。細かいところがゴニョゴニョっと省略されているのが特徴的。その省略により、本来複雑な漢字も密度が一定になっており、とても柔らかだ。 前回、前々回ご紹介した2名とは異なり、作者であるミキイサム氏は本職の方だ。 ミキイサム氏氏は明治生まれで東京美術学校(現・東京