「竈門 禰󠄀豆子は完全に人間に戻ったワケではなく、『鬼の遺伝子』とでも呼ぶべきモノを体内に残していた可能性はありませんか?」 胡蝶記念病院の理事長室を訪れていた竈門 カナタは、挨拶もそこそこに、核心に迫る質問を投げかけた。理事長は敢えて即答せずに、壁に飾られた歴代の理事長の写真を一瞥しながら、慎重に言葉を選んだ上で口を開いた。 「その可能性はゼロではありません…が、それを現時点で検証するのは不可能です」 「そもそも、『鬼化』を引き起こした原因となる物質が体内に残存していたとしても、それが遺伝子なのか、それともウィルスの類いなのか、はたまた自然界には存在しない化合物だったのか…当時の血液サンプルを冷凍保存していたワケではないので、正直、今日では調べようがないのです」 「でも、禰󠄀豆子が人間に戻ってから暫くの間は、予後管理として何回かは検査したんですよね?その記録は…?」 「えぇ、もちろん