風邪の熱のせいか、四半世紀も前のことを思い出した。大学生だった時に得た知識はゼロであることを、実感を伴って思い出した。私は大学で何も知的訓練を身につけなかった。そのことを悔しく思う。知的訓練を積んでいたら、その後たびたび感じる引き目、負い目を持たずに済んだだろうに。 自分が学問に向いているような錯覚を最近もまたしていたことへの無意識下での反駁か、それともじわりじわりと逆流するように過去のことを感覚まで含め思い返すようになったのは、こういうのは体が老いはじめた証拠だろうか。 私の父の世代にはまだ大学は一部エリートの行くところだったようだ。父は大学どころか夜間高校へ自費で通い、母は中卒だった。そして父母は学歴とは無縁な生活を営んだ。祖父は地方ではそれなりに有名人で、村の役人をしていたようだ。村の役人をしていたのに子供に学歴をつけようという動機が希薄だったのは、祖父の弟を祖父が金銭的に無理をして