新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しては、前代未聞のスピードで2つのmRNAワクチンが実用化され、世界中で接種された。なぜmRNAワクチンは高い効果を示すことができたのか、また、次のパンデミックに備えるためにはどうすればいいのか、東京大学医科学研究所ワクチン科学分野の石井健教授が、2022年8月15日、本誌の取材に応じた。
ケタミンといえば、強力な麻酔薬であると同時に特異な幻覚作用故に乱用の懸念があることから麻薬に指定されている薬剤です。何しろ臨死体験の際に味わう(といわれる)幽体離脱現象を体験できるともいわれます。しかも特許が切れていることもあり(最初の合成は1962年です)、非常に安価に手に入ります。特に香港や台湾では乱用が大きな社会問題になっているいわくつきの薬剤です。一方、こうした向精神薬には表と裏の顔があります。もちろん乱用は裏の顔ですが、表の顔としては麻酔薬の他に、より低用量で使うことによって非常に優れた抗うつ効果があることが知られ、ここ数年非常に注目されています。 何しろ、既存の抗うつ薬や電気痙攣刺激に抵抗性の難治性のうつ病に劇的に効果が現れるというのです。しかも、既存の抗うつ薬では効果が現れるまで2~3週間を必要とするのに、ケタミンの場合はわずか2~3時間。しかもそのケタミンの作用は1週間も続
理化学研究所が2023年3月末に、研究者600人を雇い止めするというニュースが、2022年3月下旬に報じられた。トップの解雇によって部屋やチームがなくなるため職を失う研究者が300人もいるのは気の毒だ。一方で10年の雇用期間が終了して雇い止めになる残りの300人は、厳しい言い方かもしれないが、研究の「プロフェッショナル」である以上、やむを得ないだろう。ひとくくりに、研究者の雇用不安の問題にするべきではない。 理研非正規雇用問題解決ネットワーク(理研ネット)は2022年3月7日、理研の松本紘理事長(当時)に「2023年3月末の約600人の研究系職員の雇い止めを撤回してください。無期転換ルールの適用を意図的に避けるための雇用上限は撤廃してください」との要請を、署名と共に行った。3月23日に松本理事長から、要請には応じられないと正式に回答があった。 そこで理研ネットは3月25日午前、末松信介文部
蛋白質に翻訳されない非コード配列であるイントロンのうち、少数しか存在しないマイナーイントロンが有望な創薬標的になるかもしれない──。神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター、米Memorial Sloan Kettering Cancer Center、米Fred Hutchinson Cancer Research Centerなどの共同研究グループはこのほど、マイナーイントロンと発がんとの関連を初めて明らかにした。研究成果をまとめた論文は、2021年4月12日、Nature Genetics誌のオンラインに掲載された。神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター血液・腫瘍研究部の井上大地上席研究員(グループリーダー)が、このほど本誌の取材に応じた。 この記事は有料会員限定です 会員の方はこちら ログイン 2週間の無料トライアルもOK! 購読に関するご案内 ※無料トライアルのお申し込
皆様、おはようございます。日経バイオテク副編集長の野村です。ついに、あの薬が出てきました。スイスNovartis社の脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬、Zolgensmaです。 Zolgensmaは24日に米食品医薬品局(FDA)によって承認されました。人工呼吸器なしでは2歳以上生きられないと言われている乳児型SMAを1回で治療することができる薬です。フェーズIIIのSTR1VE試験では21人の患者に投与され、2019年3月の時点で19人がイベントフリーで生存(1人死亡で1人は試験中止)。フェーズIコホートのSTART試験では高用量群12人中2人が立ったり歩いたりできているという素晴らしい臨床効果を発揮しています。 同時に価格も発表されました。212万5000ドルだそうです。1ドル110円で計算すると2億3375万円。高額さが批判を浴びていたLuxturnaの85万ドルを大きく上回り、
2020年、世界に感染が広がり、医療だけでなく経済にも大きな影響を与えている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。しかし、製薬企業やバイオ企業が異例のスピートで研究開発を進めた結果、第3相臨床試験で有効性・安全性がが示されるワクチンが出てきた。第3相臨床試験でのデータに基づき、12月2日に世界で初めて英国で、続く11日には米国でCOVID-19ワクチンが認可(緊急使用許可)を得た。 英国と米国が緊急使用を一時的に許可したのは、米Pfizer社とドイツBioNTech社がCOVID-19に対して開発していたmRNAワクチン(開発番号:BNT162b2)。既に英国では、優先接種の対象である高齢者などの接種がスタートしている(米国でも14日から接種を開始)。他にも、米Moderna社のmRNAワクチン(mRNA-1273)、英Oxford大学と英AstraZeneca社のウイルスベクター
厚生労働省は、2020年5月15日、日本医療研究開発機構(AMED)の研究班が日本赤十字社の協力を得て取りまとめた「抗体検査キットの性能評価」の研究結果を公表した(表1)。しかし、今回結果が公表された性能評価の研究については、複数の業界関係者から「そもそも研究のデザインからしておかしいのでは」と根本的な指摘が幾つも出ている。 「性能については、なかなか一概には判断できないことが分かった」 まず、公表された「抗体検査キットの性能評価」の研究結果について振り返りたい。厚労省が公表した結果によれば、今回研究で使用された抗体検査は、A社からE社まで5社のキットや試薬だ。うち、4社は、イムノクロマト法(ICA法)を使って、新型コロナウイルスに対する抗体の有無を調べる定性のキットであり、1社は、化学発光免疫測定法(CLIA法)を使って、新型コロナウイルスに対する抗体の有無を調べる定性の試薬だった。いず
COVID-19の収束シナリオとその後の社会、経済について分析する寄稿の第7回⽬は、各国でどのような対策を講じているかについて触れるとともに、COVID-19の影響が長引けば、アジア経済圏が台頭する可能性があるといった筆者らの予測について述べる。【訂正】中国での個人に対する監視方法の記述に一部誤りがありました。健康コードは各自治体が管理しているシステムです。お詫びして訂正します。 COVID-19の拡大に対し、各国が様々な方策で対応している。これらの方策は大きく4つの方向性に分けられる(図12)。それぞれの国で出口戦略が異なる現状を考察し、次回でヘルスケア企業の今後を論じるためのベースとしたい。 個人の徹底監視体制を敷く中国、韓国 まず1つ目の方向性として、「ITを駆使した個人の徹底監視による封じ込め」が挙げられる。代表的なのは中国や韓国である。 中国では、各自治体が利用者の健康状態を表示
COVID-19の収束シナリオとその後の社会、経済について分析する寄稿の第6回⽬は、第4回で紹介した4つの経済回復シナリオをベースに、今後考えられる変化と中長期的な世界観を各シナリオについて考察する。 図10に、4つの経済回復シナリオに基づき、考えられる社会や生活の変化と、その先にある世界観を整理した。一般市民の移動が制限されることによって、地方都市の活性化やデジタル化が進行する。ただ、移動制限の程度や期間、つまりシナリオの種類によって、行き着く先の世界観は異なると考えられる。 早期収束でもリモート化が進展 まず、アップサイドのシナリオについて触れる。これはワクチンの早期開発により感染が収束し、経済がV字回復するシナリオである。この場合、短期的な移動制限により人々の活動の主体がベッドタウンなどの居住都市に移行することで、居住都市のローカルエコノミーが発展すると考えられる。 移動規制中にEC
COVID-19の収束シナリオとその後の社会、経済について分析する寄稿の第5回⽬は、COVID-19の各産業に対する短期的な影響とそれに対して必要な対応について触れたい。 ヘルスケア業界への短期的な影響は軽微 COVID-19の流行が本格的に始まった2月から比較して、各産業における株価指数がどの程度影響を受けたかを図8に示した。これらの業界の中でまず挙げられるのが、移動制限により利用客数に多大に影響を受けた交通業界だろう。特に異国間での交通を担う航空業界は多大な影響を受け、4月27日時点での株価指数は2月3日比で34%も下落した。鉄道などの陸運については、海運・空運と比較すると株価指数の下落率は小さいが、外出自粛や在宅勤務の推進により利用客が大幅に減少しており、今後しばらく影響は続くと考えられる。 また、金融サービスについても同様に交通業界同様に株価指数への影響が大きかった業界の1つだろう
COVID-19の収束シナリオとその後の社会、経済について分析する寄稿の第4回⽬は、前回紹介した感染収束のシナリオをベースにしながら、経済活動の回復に関する4つのシナリオについて触れたい。 COVID-19の収束には集団免疫が必要で、「ワクチンの早期開発」「集団免疫の獲得」の成否によってシナリオが3つに分かれることを前回説明した。しかし経済活動の回復については要素がもう1つ加わる。COVID-19が収束していない中では、「一定の経済活動を許容しながら感染をコントロールしていく」のか、あるいは「感染制御のために強い経済活動への制限をかける」のか、どちらかを選択しなければならないからだ。 そうした視点で分岐を新たに加えると、経済回復のシナリオは図7の通り4つに整理される。最も明るいシナリオ(アップサイド)では1、2年で収束し経済がV字回復するが、最も暗いシナリオ(ダウンサイド2)では収束前に経
安倍晋三首相は2020年4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため緊急事態宣言を発令しました。対象地域は東京を含む7都府県(神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)で、期間は4月8日から5月6日までの約1カ月です。 1カ月という期間を長いと感じるか短いと思うか、捉え方は人それぞれでしょう。確実に言えるのは、このウイルスは人間の都合など全くお構いなしだということ。暖かくなれば感染拡大のペースが落ちるのではないかという、当初の楽観論も最近は聞かれなくなりました。では、新型コロナの影響は一体いつまで続くのでしょうか。 「新型コロナウイルスとの闘いは短距離走ではありません。1年は続く可能性のある長いマラソンです」──京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の山中伸弥教授・所長は自ら立ち上げたサイトで、こう指摘しました。ランナーでもある山中教授が「マラソン」という言葉を使った真意を、私なりにデータを
COVID-19の収束シナリオとその後の社会、経済について分析する寄稿の第3回目は、具体的な3つのシナリオについて触れたい。 集団免疫の獲得以外に方法は無い COVID-19は、封じ込めなどによって一部の地域で部分的に収束したとしても、人の移動を前提とした現在のグローバル資本主義社会においては、他の地域からの持ち込みによって再燃するリスクを常に抱えることになる。そのため、封じ込めによる全世界的な収束は実現困難で、集団免疫を獲得する以外に収束させる方法は無い。 本サイトの読者に集団免疫を改めて説明するまでもないが、全人口の一定数が感染症に対して免疫を有することで、ウイルスの基本再生産数(R0)を1未満にし、感染拡大を抑える戦略である。COVID-19に当てはめると、R0が2.5程度とした場合、全人口の少なくとも60%程度が免疫を保有する必要がある。 集団免疫を獲得するには2つの方法が存在する
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンが、世界中から熱望されている。2020年5月22日に世界保健機関(WHO)が発表した「Draft landscape of COVID-19 candidate vaccines」によれば、世界では、100品目以上のワクチンの開発が進められており、10品目で臨床試験が実施されている。そんな中、ワクチン開発に追い風となる知見が発表された。 有効なワクチンを開発するためには、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病因についての情報だけでなく、感染した患者のSARS-CoV-2に対する免疫応答に関する情報が必要であるが、そうした報告はこれまでほとんど無かった。特に、(1)感染した患者の免疫系によってSARS-CoV-2に対してどのような免疫応答が誘導されているのか、(2)その免疫応答は持続するのか、(3)自然界に存在する、いわゆる
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して、免疫があるかどうかを調べる抗体検査に注目が集まっている。抗体検査とは、被検者の血液や体液中に、細菌やウイルスなどに対して反応する抗体(IgGやIgMなど)があるかどうかを調べる検査だ。血清などを検体に使うことから、海外では、血清検査(Serology Testing、Serological tests)とも呼ばれる。 「抗体検査」とは一体何か? 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しては、被検者の鼻咽頭(びいんとう)拭い液や咽頭拭い液の中の、新型コロナウイルスのゲノム(RNA)があるかどうか調べる「PCR検査」が行われている。また、被検者の鼻咽頭拭い液や咽頭拭い液の中に、新型コロナウイルスの蛋白質があるかどうかを調べる「抗原検査」の実施も始まった。これらはいずれも、“新型コロナウイルスの存在そのもの”の有無を調べるための検査で
米国立衛生研究所(NIH)は2020年4月29日(現地時間)、NIH傘下の米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が主導している、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するレムデシビルの臨床試験に関して予備的なデータ解析の結果を発表した。レムデシビルを10日間投与した群は、プラセボ(偽薬)群と比較して治療期間が31%短縮した。また同日、米Gilead Sciences社は、COVID-19の重度の入院患者を対象にした臨床試験で、初めに症例登録された397例を解析した結果、同薬の5日間投与と10日間投与で有効性などに有意差は認められなかったと発表した。さらなる症例解析は必要であるものの、これらの結果を総合すると、レムデシビルの5日間投与によって、COVID-19の治療期間を短縮できる可能性が出てきた。
新型コロナウイルスの感染がじわじわと拡大する中、治療薬やワクチンへのニーズは高まっている。日経バイオテクでは、米国、中国、日本を中心に治療薬やワクチンの研究開発動向を調べた。国内で新型コロナウイルスを検出する検査技術の開発に乗り出した企業の動向も調査した(開発動向がめまぐるしく変化しているため、3月16日号特集をオンラインで先に掲載していきます)。 (1)新型コロナウイルスについて今分かっていること (3/11公開) (2)世界の治療薬の開発動向 (3/12公開) 既存薬の転用と新薬の開発が同時並行で進行中 (3)国内製薬企業の動向 (3/12公開) 治療薬やワクチンの開発に乗り出す国内企業はごく一部という現実 (4)世界のワクチンの開発動向 (3/13公開) 開発競争が激化する中、不安材料も浮上中 (5)国内の検査技術の開発状況 (3/13公開) 研究用試薬を容認し検査体制の拡充を図った
同臨床試験は、COVID-19に対するファビピラビルの有効性、安全性を評価するため、The Third People's Hospital of Shenzhen(深セン市第三人民医院)で実施された非ランダム化非盲検比較試験(中国の臨床試験データベースの登録番号:ChiCTR2000029600)。対象は、16歳から75歳で、PCR検査で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性と診断され、発症から7日以内に同医院に入院した患者。体温が38℃以上か、少なくとも1つの肺炎関連の全身性症状または呼吸器症状を呈し、経口投与ができる症例のみを組み入れた。症状が重篤な患者は除外された。 その上で、標準療法に加えてファビピラビルの投与(1日目は1回1600mg×2回、2日目から14日目は1回600mg×2回)にインターフェロンα吸入(1日2回500万ユニット)を併用する群と、対照群として、標準療法
米大手製薬企業のGilead Sciences社の株価はコロナショック以降、大幅に上昇した(画像:123RF) 新型コロナウイルスの感染がじわじわと拡大する中、治療薬やワクチンへのニーズは高まっている。日経バイオテクでは、米国、中国、日本を中心に治療薬やワクチンの研究開発動向を調べた。国内で新型コロナウイルスを検出する検査技術の開発に乗り出した企業の動向も調査した(開発動向がめまぐるしく変化しているため、3月16日号特集をオンラインで先に掲載していきます)。 (1)新型コロナウイルスについて今分かっていること(3/11公開) (2)世界の治療薬の開発動向(3/12公開) 既存薬の転用と新薬の開発が同時並行で進行中 (3)国内製薬企業の動向(3/12公開) 治療薬やワクチンの開発に乗り出す国内企業はごく一部という現実 (4)世界のワクチンの開発動向 (3/13公開) 開発競争が激化する中、不
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