Previous ToC Next PDF 版はこちら Contents 1. いろいろなモデル計算 (2020/4/10) 1.1. 西浦博北大教授 1.2. 大橋順東大教授 1.3. 佐藤彰洋横浜市大教授 1.4. まとめ 2. 交通整理 (2020/4/12) 2.1. モデルが人口保存を満たしていないこと 2.2. 時間遅れの扱いが標準的なものと違うこと 2.3. モデルの検証がなされていない 2.4. 予測に「最悪条件」を使うのは適切ではない 2.5. まとめ 3. 交通整理の続き (2020/4/16) 4. 交通整理の続きその2 (2020/4/16) 5. 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)(2020/4/18) 6. 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)その2(2020/5/2) 7. 朝日新聞
8. K値(2020/7/23) 色々話題となっている「K値」について、 medRxiv にある 元論文 の内容を検討します。 まず、 K値自体は、 と定義されます。d は日を単 位とした時間、Nはある時刻での累積の患者数です。回復した人を除くのかど うかは明記されていませんが、減ることはないとされているので除かない ものと思われます。 K値自体は単に1週間でどれだけの割合で累積患者数が増えたか、というもので すが、次に「モデル」ないし仮定がはいります。 で、k は定数とされています。そうすると、 と で、 なので、 となって、 の極限で必ず収束する、という「モデ ル」であることがわかります。 (2020/7/25 追記) この k は論文では a constant dumping factor とされていて 1 より小さい ことが暗黙に仮定されていますが、しかし実際のデータでは必ずしも
5. 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)(2020/4/18) ここまで、新型コロナウイルス感染症対策本部 クラスター対策班 西浦氏の見 解の他、いくつかの研究者の見解とその間の議論をみてきました。西浦氏は政 府の対策班のメンバーではあるものの、その見解は政府公式のものではありま せん。ここでは、政府公式の見解、すなわち、内閣総理大臣を本部長とする新 型コロナウイルス感染症対策本部の下に設置された新型コロナウイルス感染症 対策専門家会議の見解をみていくことにします。 ここでは、特に、R (実効再生産数)の推定値に注目します。専門家会議の資料 ではこの言葉を使っていますが、 SIR モデルをみる限り、 と R の区別に意味が発生するのは、 回復者や感染者の全人口に対する割合が無視できなくなったところであり、 4月現在の日本はまだそうではないとすれば、
1. いろいろなモデル計算 (2020/4/10) コロナウイルス(SARS-CoV-2) の感染がどのように広がるかについては色々な ことがいわれています。が、その背景にあるモデルはほぼ同じで、 Kermack and McKendrick の SIR モデル A contribution to the mathematical theory of epidemics, 1927, Proceedings of the Royal Society A です。これについての牧野による解説は 岩波「科学」5月号掲載予定の原稿に書いた通りなので、まずはそちら を御覧いただければと思います。 基本的にはこのモデルを使っているにもかかわらず、どう対策をする必要があ るか、については色々な人が色々なことをいっていて、大きな幅があります。 ここでは、そのうち3つを取り上げて、どのような違いが生じている
2. 交通整理 (2020/4/12) 佐藤氏のモデル 都道府県ごとのシミュ レーションによる検討について、 本堂毅氏、 佐野雅己氏、 松下 貢氏の連名による 批判が公開されています。 批判は4点で モデルが人口保存を満たしていない 時間遅れの扱いが標準的なものと違う モデルの検証がなされていない 予測に「最悪条件」を使うのは適切ではない です。 twitter でも議論されていますが、少し話がかみあわなくなっている 気もするので以下で整理を試みます。 2.1. モデルが人口保存を満たしていないこと これは満たしていないことは間違いなく、既に 1.3 節で議論した通りです。これは、 佐藤氏のモデルでは、潜伏期にある人口が明示的に現れないからです。 S, I, R の他に「潜伏期にある人」が存在するのですから、これをいれないと 元の総人口にはならないのは明らかでしょう。 1.3 節の記法でい
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