ブックマーク / mhotta.hatenablog.com (12)

  • 波動関数の収縮はパラドクスではない。 - Quantum Universe

    コペンハーゲン解釈を学ぶ時、一番最初にひっかかるのは「波動関数の収縮」という概念ではないだろうか。 ある量子系を測定して結果を得た途端、その状態は瞬間に別な状態へと変化するという、あの話だ。 古い教科書で学んだ先生方からは、「そんなことは気にするな。まずは計算ができるようになれればいい。(Shut up and Calculate!)」と親切なアドバイスを受けた人もいるだろう。 それでも何か気持ち悪い感じが残っている人も多いらしい。 従来の教科書ではコペンハーゲン解釈の質的パーツの説明が抜けているから、こういう消化不良を起こすのだと思われる。 「コペンハーゲン解釈では波動関数(量子状態)は物理的実在ではなく、認識論的情報概念である。」としっかり理解すれば何も問題は起こらないのだ。 観測者が持っている系の情報量に応じて、1つの量子系に対する波動関数は人によって異なってもいい。 実在論的解釈

    波動関数の収縮はパラドクスではない。 - Quantum Universe
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    zu2 2023/10/06
  • 摂動論と、"時間とエネルギーの不確定性関係"という名の幻。 - Quantum Universe

    20世紀初頭の量子力学黎明期の混乱の中で、間違った形のまま固まってしまい、最近まで伝承されてきてしまったものの1つに、"時間とエネルギーの不確定性関係"の話がある。 発端はソルヴェイ会議におけるアインシュタインとボーアの論争から。 アインシュタインは光子箱の思考実験を持ちだして、時間とエネルギーの間には不確定性関係はないと主張したが、ボーアは彼の一般相対論を持ち出して論破したのだと言われている、あの例の話だ。 しかし現代において量子測定理論を少しかじった研究者ならば、ボーアの言い分は全くのこじ付けで的外れであることを知っている。 一方、湯川中間子論でも論じられた、摂動論的議論に現れる別な"時間とエネルギーの不確定性関係"は多くの人に誤解されたままのようだ。 この問題の内容はこうだ。 相互作用をしている2体系を考えよう。保存量である全ハミルトニアンHを、それぞれの部分系の一体エネルギーを記述

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    zu2 2020/04/19
  • 「量子的」と呼ばれつつ、古典的な本質をもつ現象 - Quantum Universe

    「量子的」と思われているいくつかの現象の質が「古典的」であることは、案外知られていないようだ。 弱測定における増幅効果もそうだし、量子消しゴム(量子消去)をレーザーポインター等の日常の道具を使って確かめようとする実験も、実はそのような例になっている。 質的に量子効果でしか起き得ない「量子的な場合」と、古典力学でむしろ馴染みのある現象を量子的環境にも適用している「量子的な場合」の区別は重要かもしれない。 今回はこのことについて述べてみよう。 まずは弱測定の増幅効果(amplification effect)の話からいこう。 (弱値、弱測定についての基礎的な話は http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/22/123604 http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/11/152110 http://mh

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    zu2 2014/05/22
  • 量子エンタングルメントを使って量子系から沢山の情報を取り出す方法 - Quantum Universe

    量子エンタングルメントは、量子情報科学における量子テレポーテーションや量子コンピューティング用の資源として知られている。 今回は様々な物理学分野における精密測定の資源としても使える可能性がある、量子エンタングルメントの側面を紹介しておこう。 現時点でこの技術を使っているのは量子光学系の実験が主だが、これからは半導体を含む様々な物性系や素粒子・原子核系の実験、そして宇宙観測の技術にも入り込んでいく可能性もある。 物理学の多くの実験では、未知の相互作用プロセスの解明を目的にしている。 例えばヒッグス粒子の発見も、この粒子が関わる反応を精密に測定して達成されたものだ。 特に微小な結合定数等のパラメータの大きさの推定が重要な場合も多い。 そこで簡単な例を挙げて、パラメータ推定における量子エンタングルメントの有用性を説明したい。 図1のような外から中が見えない箱がある。 中には、箱の正面と直交したあ

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    zu2 2014/05/14
  • 時間とエネルギーの不確定性関係と、相対性理論 - Quantum Universe

    時間とエネルギーの不確定性関係は、世間で誤解されている側面が強い。 測定時間とエネルギーの測定誤差には不確定性関係があると信じられてたり、そのため短い時間ではエネルギー保存則は破れてもいいと考えられたりしている。 これらは以下の記事でも言及されているように、全くの間違いだ。 http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/04/26/061840 http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/11/155744 量子力学において時間はエルミート演算子で書ける物理量ではなく、4次元時空の中の空間的(spacelike)な3次元超平面を指定する外部パラメータに過ぎない。 従って測定時間とエネルギーの測定誤差の不確定性関係は、教科書で習う位置と運動量の間のケナード不等式(ΔxΔp≥ℏ/2)や最近知られるようになった小澤不等式

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    zu2 2014/05/08
  • トンネル領域で粒子を見つけたら、その足らなかったエネルギーはどこから来たのか? - Quantum Universe

    ツイッター(@hottaqu)で、次の問題を出してみた。 例えば1次元空間で図1のようなポテンシャルの中の粒子を考えよう。 基底状態のエネルギーEは、原点付近のポテンシャルVoより小さい。 しかし、エネルギーが足らないため古典的には粒子の侵入を許さない領域にも、基底状態の波動関数は浸み込んでいる。 「トンネル効果」である。 従って粒子が原点周辺に見つかる確率は、零ではない。 しかし原点付近に粒子が見つかるとすると、その足らなかったエネルギーはどこから来たのか? それが「問題」である。 測定の結果、例えば図2のように粒子がある点x=ξの周辺に局在した波動関数u(x-ξ)になる。 この状態では明らかにポテンシャルエネルギーの期待値は基底状態のエネルギーより高い。 また粒子がより局在するため、運動エネルギーの期待値も基底状態の時より高くなる。 従って確かに粒子はエネルギーの高い状態に見つかったこ

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    zu2 2014/05/08
  • 物理学における存在とは? - Quantum Universe

    「存在とは何か?」という問題は、来実に根が深い。 例えば、相対論的量子場の真空状態|0〉を考えよう。 普通の慣性系での量子化では、真空は粒子数が零の状態だ。 またエネルギー密度の期待値もどこでも零だ。 そして図1のように慣性運動している測定機Aで測っても、粒子は観測されない。 空っぽの「無」の状態そのもののように思える。 しかしFulling-Davies-Unruh効果、通称「ウンルー効果」という面白い現象が知られている。 図1のBのように真空中を一様加速度運動をしている測定機は、あたかもその加速度に比例する温度の熱浴の中にいるように振る舞うのだ。 またこの一定の加速度κで運動している測定機を記述するのに便利な図2のリンドラー座標系(τ,u,y,z)に移ると、この座標系での粒子数も零ではなくなり、多数の粒子が有限温度の分布をしているように見える。(cは光速度で、図1ではu=0の軌跡を測

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    zu2 2014/05/08
  • 量子エンタングルメントと時間の矢 - Quantum Universe

    セス・ロイドさんは、量子メカニックを名乗る、猛烈に頭の回転が速いMITの教授である。 量子情報分野では多くの良いお仕事をされており、また「宇宙をプログラムする宇宙」(早川書房)等のポピュラーサイエンスのの著者としても有名である。 1988年の彼の博士論文での研究[1]が記事[2]に取り上げられていた。 今回このセスさんが考えていた周辺のことに触れてみたい。 量子エンタングルメントと時間の矢の問題である。 但し理解のための準備も必要なため、少し違う情報理論の入口から入っていこう。 まずアリスが1ビットの古典情報が書き込まれている電子スピンを持っているとしよう。 例えばz軸方向のダウン状態を0に、そしてアップ状態を1に対応させればこれは実現できる。 アリスはできるだけ安全にこの情報を秘匿しておきたいと願っているとしよう。 古典情報は簡単にコピーできるのが特徴であり、来は最大の利点でもある。

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    zu2 2014/04/28
  • 測定時間とエネルギーの測定誤差の間に不確定性関係はない。 - Quantum Universe

    量子論で有限の時間ではエネルギー保存則が破れるという間違った説明が様々な大学の授業で教えられているようだ。 特に素粒子や場の量子論の講義の中で、重い粒子が媒介して力を伝達するという部分においてこのような説明がなされているらしい。 この誤解は、有限時間ではエネルギーは正確に測れないという、時間とエネルギーの不確定性関係の間違った理解から出ているようだ。 もちろん時間変動を測り続けてフーリエ変換をするような、時間をかけないとエネルギーが測れない悪い測定も存在する。 しかしエネルギーを測る誤差は、来測定時間と全く無関係である。 今回はそれを説明しておこう。 そのためにまず「理想測定」とは何かということを、スピンを例にして復習しておこう。 図1、図2にスピン1/2をもつ中性原子のz軸成分を理想測定する測定機の概念図を書いてみた。 理想測定の満たすべき性質の1つとして、「正確に」測る物理量を読みと

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    zu2 2014/04/28
  • 鉛筆とインフレーション宇宙とスクィーズド状態 - Quantum Universe

    とねさんの日記の「鉛筆はどれくらいの時間立っていられるか?」という記事に、量子揺らぎとマクロな揺らぎを繋ぐJJサクライの問題が出ていて興味をひいた。 教科書のほうにはアイスピックを例として書かれていたようだが、NHKの番組では鉛筆が登場したため、とねさんも鉛筆で説明してくれている。 問題は以下のものである。 "ハイゼンベルクの不確定性原理だけが制限であるとき、鉛筆をとがった芯を下にして垂直に立てたとき、つりあいが保てる時間を見積もりなさい。鉛筆の芯を支えている表面は堅いとする。鉛筆の長さと質量は適当な値を仮定し、つりあいが保てる時間を秒単位で求めなさい。ただし「つりあいが保てる」とは鉛直線に対して1度傾くまでの状態のこととする。" (図1参照) 古典的境界条件は理想的に整えられており、まっすぐ立った鉛筆が倒れる原因は量子揺らぎだけとしよう。この仮定のもとで、具体的に三菱鉛筆(長さ=17.6

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    zu2 2014/04/12
  • 弱測定(weak measurement)に関する最近の論争 - Quantum Universe

    弱値研究で主導的役割を演じてきた、バイドマンさんと話す機会に恵まれた。 彼がアハロノフさんと一緒に提案した「弱測定」の有用性に関して、量子情報理論から疑問視する論文[1]がPhysical Review Lettersに出ており、それに反論[2]をバイドマンさんが書いた直後であった。 彼との会話でも、これが話題にあがった。 この論争の出発点の部分は、自分も弱測定の話を聞いた当初から思っていたことでもあるので、今回はこのことを書いてみよう。 まず弱測定を説明しておこう。 これはアハロノフさんに言わせると、量子系Sの状態準備とその後の理想測定との中間時刻にSがとっている"実在量"、「弱値(weak value)」を測る測定である。 一般に複素数である弱値については、下記のブログも参考にしてほしい。 http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/11/15

    弱測定(weak measurement)に関する最近の論争 - Quantum Universe
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    zu2 2014/04/07
  • 不思議の国のアリスがみた量子猫? - Quantum Universe

    3月にあった研究会QMKEK(http://www-conf.kek.jp/QMKEK/)で弱値の講演をされたホフマンさん、細谷さん、筒井さんへ私がさせて頂いた質問の中に、量子チェシャの話がある。 (註:弱値については http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/11/152110 http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/20/233839 http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/22/123604 を参考にして欲しい。) チェシャ(Cheshire cat)とは、ルイス・キャロルが書いた「不思議の国のアリス」に出てくる変なのことだ。 薄ら笑いをする変なだが、もっと変なことに、そのはしっぽから見えなくなり、最後に薄ら笑いだけ残して完全に消え去るのだ

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    zu2 2014/03/27
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