ブックマーク / www.brh.co.jp (65)

  • 発生生物学の静かな革命

    VOL.9 動物の形の多様性という名の変奏曲集II てのひらと指 近藤寿人(JT生命誌研究館 顧問・表現ディレクター) 題に入る前に、次回のテーマの一つとも関連する、首の長さについて少し考えてみましょう。『首が長いキリンでも、首が短いヒトでも、首の骨(頸椎)の数は同じで7個』ということは、どこかでお聞きになったのではないかと思います。哺乳類には大小様々、陸上のもの海のものなど生活も様々――にもかかわらず、哺乳類の頸椎の数は7と決まっているのです。キリンは、各々の頸椎が長くなったことによって首が伸びたのですが、最近のキリンのゲノムとオカピ(キリンの最近縁種だが首は短い)のゲノムの比較から、どのような遺伝子(結構たくさん)の変化によってキリンは長い頸椎と首を持つに至ったかについての、重要な情報が得られました[文献1]。キリンとオカピのゲノムの比較から得られる知見については、帯刀益夫博士がその

    発生生物学の静かな革命
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    zu2 2024/03/01
    "つまりShhが合成される領域から小指と人差し指は必ず作られる!ということです" 小指と薬指かな、ここ
  • SPECIAL STORY パンダの時間

    1.いのちを見つめ、問い続ける場所へ アドベンチャーワールドは、和歌山県の白浜町にあります。1978年開園、面積は約80万平方メートル、甲子園20個分です。ここで約120種、約1600頭の動物たちを飼育しています。テーマパークとして、お買いものも楽しんでいただける施設ですが、もう一方で動物園というものには種の保存や調査・研究という社会的役割があります。 ジャイアントパンダは、繁殖を目的として中国からお借りしています。チーターは南アフリカ韓国と連携して繁殖に取り組んでいます。希少な動物を国内外の施設と共に研究していくことも、わたしたちの大きな役割です。 わたしたちは今年、「いのちを見つめ、問い続ける」というパークの理念を掲げました。パンダやイルカといった生きものだけでなく、土壌にいる生きもの、わたしたちがべているもの、あらゆる生きものの中に、わたしたちは生かされている。そのようなことを感

    SPECIAL STORY パンダの時間
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    zu2 2024/03/01
  • PERSPECTIVE 動物の腸内細菌

    1. 消化を助ける細菌 私たちの毎日の生活には、事が大切です。肉や魚、野菜、パンやご飯、いろいろなべ物をべることが健康的な事だと考えられています。“You are what you eat”(あなたはあなたのべた物でできている)という言葉がありますが、べた物はどうやって、あなたをつくるのでしょうか。 べ物を身体に取り込むためには、まず細胞が取り込めるように分解する必要があります。これを消化といい、べ物を分解するのは消化酵素の役割です。ご飯やパンなどの「炭水化物」は唾液の消化酵素アミラーゼによって分解が始まります。一方、肉や魚などの「タンパク質」は胃液のペプシンで、「脂質」は胆汁と膵液のリパーゼで分解が始まり、最終的にそれぞれの最終単位となった「ブドウ糖」「アミノ酸」「脂肪酸」が小腸で吸収されます。主に野菜には、ビタミンや物繊維などが含まれますが、ビタミンは小腸で吸収される

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    zu2 2024/03/01
  • RESEARCH コケの細胞分裂にみる上陸の姿

    1.植物の陸上進出とコケ植物 私たちが暮らす陸の生態系は、植物によって支えられている。植物が上陸する以前の陸地は、岩石が剥き出しで乾燥し、昼夜の寒暖差が大きく、紫外線が降り注ぐという生物にとっては過酷な環境であった。もちろん従属栄養生物が生活するに足る栄養分も存在しない。荒れた大地にまず進出し、他の生きものが陸で暮らすための基盤になったという意味で、陸上植物の登場は生物史上の大きな出来事だったといえる。 最初に陸上に進出した植物がどのような姿をしていたかはわかっていない。姿がわかる大型化石で最も古いものは、ライニー植物群など枝分かれをした軸と胞子嚢を持つことが知られている。しかしより古い年代の地層から、現在のコケ植物に似た特徴を持つ胞子の化石が見つかっている。コケ植物のように小さく、厚いクチクラ層を持たない植物体は化石として残りにくいことから、初期の陸上植物は現在のコケ植物のような小さな姿

    RESEARCH コケの細胞分裂にみる上陸の姿
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    zu2 2023/06/01
  • RESEARCH 哺乳類の鼻をつくった顔の進化

    2.特徴的な哺乳類顔 脊椎動物の顔を並べたとき、皆、2つの目があり、口があり、歯の生える上下の顎がある。これに加えて、哺乳類の顔というのはユニークな特徴がたくさんある。例えば、他の動物には無い、唇を動かし表情を作るような表情筋があるのもそのひとつ。しかしもっと根的な違いがある。「鼻の頭は?」と問われればヒトを含む哺乳類であれば顔の真ん中の突起を指せる、しかし、カエルやトカゲ、鳥においてはどうだろう…。彼らの鼻は口と一体化しており、上あごの途中に単に鼻の孔が開いているだけだ。一方で哺乳類の顔は、顔の真ん中に機能的にヒクヒク動く、上あごとは独立した鼻がある(図2)。この“独立した鼻”は実は哺乳類だけの特徴なのだ。このように、哺乳類とそれ以外の脊椎動物で形態的な差があるにも関わらず、その進化的背景については全くの謎だった。では、どんな進化がこの哺乳類特有の顔を生んだのだろうか。 3.骨の位置を

    RESEARCH 哺乳類の鼻をつくった顔の進化
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    zu2 2023/06/01
    “一方で哺乳類の顔は、顔の真ん中に機能的にヒクヒク動く、上あごとは独立した鼻がある(図2)。この“独立した鼻”は実は哺乳類だけの特徴なのだ”
  • 発生生物学の静かな革命

    VOL.6 肺の発生にまつわる、2つの話題 近藤寿人(JT生命誌研究館 顧問・表現ディレクター) 今回は、肺の発生にまつわる2つの話題についてお話しします。 最初の話題は、私たちが呼吸器として持っている肺が道から分かれて生まれる過程についてですが、これまた以前にお話しした「抑制することが大切(VOL.4)」ということの再確認でもあり、同時に発生生物学でよく語られる「上皮―間充織間相互作用」(これまではほとんど、間充織からの作用ばかりが語られていながら「相互作用」と言われていた)の上皮からの作用の証明でもあります。 第2の話題は、魚類が持っていた肺と、私たち4足動物が持っていた肺の関係で、生命誌研究館のシンボル的な展示動物である肺魚も主役です。 肺と道の関係:道の上皮でSox2の発現を無くすとどうなるか? 上皮と間充織の関係 喉の奥から肛門までをつなぐ消化管の一番内側の管は、1層の内胚

    発生生物学の静かな革命
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    zu2 2023/06/01
    “左右一対の肺を持つのは4足動物だけである”
  • PERSPECTIVE ゲノムから見る生命誌の時間 ー進化の時間ー

    RESEARCH & PERSPECTIVE ゲノムから見る 生命誌の時間 —進化の時間— 約38億年前にゲノムをもつ細胞である最初の生きものが誕生して以来、さまざまな生きものが生まれました。暮らしの場や周りの生きものとの関わりの中で、もっているゲノムを使い、変化を受け入れ、続いてきた子孫がわたしたちです。生きものの進化の道のりをゲノムから見てみましょう。

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    zu2 2023/06/01
    生命の出現とLUCAが同時になってるのは違和感あるな
  • 発生生物学の静かな革命

    VOL.5 再生専用の細胞を用いない、私たちの組織の再生 近藤寿人(JT生命誌研究館 顧問・表現ディレクター) 組織再生の課題 1年ほど前に、「再生力のチャンピオン、イモリとプラナリアのワザ比べ」という研究員レクチャーを行いました。その趣旨は、損傷を受けた組織の再生には、再生専用の幹細胞を準備して再生する仕組み(プラナリア型)と、再生専用の細胞ではなく、既に機能を持った体細胞を使って再生する仕組み(イモリ型)とがあること、そして私たち脊椎動物の組織の再生のほとんどはイモリ型であるということでした。 脊椎動物の組織で、再生専用の細胞を用いて再生するのが確かなのは、骨格筋だけです。骨格筋繊維(多数の骨格筋細胞が融合してできた巨大な細胞)には、再生が必要になった時のために用意された休止状態の衛星細胞(satellite cells、筋芽細胞が骨格筋になる前の段階で休止したもの)が張り付いています

    発生生物学の静かな革命
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    zu2 2023/04/04
    “となると、イモリを用いた再生の研究が、現代の発生研究の最先端の一翼を担うわけですが、それに相応しいイモリの「エース」も登場しています”
  • RESEARCH 大量絶滅 生物進化の加速装置

    RESEARCH 「語る科学」 大量絶滅 生物進化の加速装置 磯崎行雄東京大学大学院 総合文化研究科 広域システム科学系 日列島のでき方を調べていたら偶然みつけた大量絶滅の痕跡。2.5億年前の海底の様子をさぐると、地球の歴史と生きものの歴史が深く関わっていることが見えてきた。繰り返されてきた絶滅という視点から生きものの進化を考える。 1.5回もあった顕生代の大量絶滅 38億年の生命の歴史の中で、化石として残りやすい硬い殻や骨をもつ生物が一斉に現われたのはほんの5.5億年前。ちょうど三葉虫があらわれた頃だ。そこで、それ以降を生物がいたことが明らかという意味で顕生代と呼び、それ以前の約40億年間に及ぶ化石不毛の先カンブリア時代と区別する。 顕生代はさらに、三葉虫などが繁栄した古生代、恐竜やアンモナイトが栄えた中生代、哺乳類などの新しいタイプの生物が発展した新生代の3つの時代に分けられる。これ

    RESEARCH 大量絶滅 生物進化の加速装置
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    zu2 2023/03/18
  • RESEARCH 発現調節配列の変化を探る

    1.脊索動物から脊椎動物へ 生きた化石といわれるナメクジウオ(図1)は日では瀬戸内海や三河湾に生息し、その一部は天然記念物に指定されている。一見サカナのようだが、体軸が脊索とよばれる柔軟な棒状の組織で支えられている脊索動物である。ヒトやカエルなど脊椎動物は脊索動物から進化してきたと考えられており、発生のごく初期には脊索で体が支えられていて、それがやがて脊椎に置き換わるのである。その進化の過程で、「全ゲノム重複」が起きていることが知られている。ここでからだ作りの遺伝子にどんな変化が起きたのだろう。 2.全ゲノム重複と重複遺伝子のはたらき方の変化 脊椎動物の祖先種は、今から5億年以上も前のカンブリア紀にゲノムDNAが倍に増える「全ゲノム重複」を2回起こしたと考えられている。これによりすべての遺伝子が2度にわたって倍になったのだから、ゲノムに同じ遺伝子が4つづつ存在することになる。重複で余分に

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    zu2 2023/03/18
  • RESEARCH 非生命から生命へ

    進化をこの眼で見てみたい。そのために分子で構成した単純な系から始めようと思ったのが、人工細胞の研究に進んだきっかけです。図鑑をひらけば、昔の生きものと今の生きものの形の違いはすべて進化という現象によるものだと説明されていますが、誰もその現場を見たわけでありません。単純な原始の細胞から始まって、徐々に複雑で精巧な生きものになっていくという、一般に考えられている進化の過程は当にあったのだろうか。進化する能力をもった分子をつくって、それを確かめてみたいと思ったのです。 進化の再現実験は50年も前に行われていました。アメリカのソル・シュピーゲルマン博士らが1967年に発表したもので、ウイルス由来のRNA複製酵素とRNAを混合することで、RNAの複製を繰り返させるというものでした。シンプルな実験ですが、突然変異(註1)と自然選択(註2)という進化のステップを再現した初めての例で、このRNAは「シュ

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    zu2 2023/03/17
  • RESEARCH 自己複製を支える核の大きさを制御するしくみ

    生きものの質の一つに「自己複製」がある。真核生物の細胞内には核やミトコンドリアなど、膜で仕切られた細胞小器官が多種類存在し、多彩な細胞機能を発揮するうえで重要な役割を担っている。分裂後の新生細胞で、それぞれの細胞小器官が独自の機能を発揮するためには、正しく分配され、細胞内で適切な大きさを維持する必要があり、細胞の大きさに合わせた巧みなサイズ調節メカニズムの存在が予想される。細胞内で遺伝情報を収納・保護する核は生命継承に重要な細胞小器官であり、その大きさは単細胞生物から多細胞生物にいたるほとんどの真核生物で細胞の大きさに比例して変化することが知られている(図1A)。核の大きさを評価する指標として、核の大きさ(Nuclear volume)を細胞の大きさ(Cellular volume)で割った値であるN/C比に着目した研究から、分裂酵母では細胞の大きさや核の中のDNAの量の変化とは関係なく

    RESEARCH 自己複製を支える核の大きさを制御するしくみ
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    zu2 2023/03/17
  • PERSPECTIVE ゲノムから見る生命誌の時間

    1.生きものの誕生 生きものの始まりの時を私たちは見ることはできませんが、研究や発見を通して実態に迫ってきました。生きものの基は、代謝し、複製し、分裂することです。代謝の起源は、原始の堆積岩の中の私たちの体をつくる有機物の痕跡によって知ることができます。およそ38億年前のイスア深海に由来する岩石に生きものがつくったと考えられる化合物が含まれているので、生命誕生はそれ以前に遡ることができます。 最初の生きものは、バクテリア(真正細菌)やアーキア(古細菌)などの原核生物と考えられています。私たちヒトを含む、目に見える生きものである真核生物は、バクテリアとアーキアとの共生から生まれたことが、多くの証拠から言われているからです。生きものの進化は、バクテリアとアーキアの共通祖先の生きものLUCA(Last Universal Common Ancestor:最後の普遍的な共通祖先) から始まること

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    zu2 2023/03/17
  • JT生命誌研究館の紙工作展

    5/14(日)を臨時休館させていただくこととなりました。何卒ご了承ください。 「JT生命誌研究館の紙工作」は、創刊以来“冊子”として発行していた季刊「生命誌」を、2002年に“カード”という新しい媒体で表現する試みをきっかけに生まれました。そして、これまでに80種類を超える紙工作が生まれています。 今回はその中から約60種類の紙工作を展示いたします。歴代の紙工作だけでなく、紙工作を実際に作り出している表現者たちの制作エピソードも映像でご覧いただけます。 ちょっと不思議で、他のどこにもなさそうな 「JT生命誌研究館の紙工作」 をたっぷりとお楽しみください。

    JT生命誌研究館の紙工作展
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    zu2 2023/03/05
  • 発生生物学の静かな革命

    VOL.2 細胞系譜の再検討 近藤寿人(JT生命誌研究館 顧問・表現ディレクター) 今回は、受精卵あるいは少し発生が進んだ段階の胚の中の、体細胞(骨や、神経や、血球など)になるずっと前の段階(「多分化能」をもつと表現されることが多い)の細胞たちから、いろいろな体細胞が生まれてくるまでの過程を見ることにしましょう。細胞が分裂して数を増やしつつ、それまで(親細胞)と異なった(娘)細胞を生み出してゆく過程の積み重ね(発生の経路)は、「細胞系譜」とも呼ばれます。 この細胞系譜を俯瞰する上で、教科書などにも取り上げられることから支配的な通説になっていた「三胚葉説」や「エピジェネティック・ランドスケープ epigenetic landscape」について検討してゆきます。結論を先に言えば、三胚葉説は全く実験的な根拠をもたないモデルです。一方、エピジェネティック・ランドスケープは、私が敬愛するConra

    発生生物学の静かな革命
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    zu2 2022/09/18
  • 発生生物学の静かな革命

    VOL.3 「細胞分化」の意味の変遷 近藤寿人(JT生命誌研究館 顧問・表現ディレクター) 発生生物学に関する解説や教科書を見ると、「細胞分化」という表現に沢山でくわします。この連載のVOL.1でお話しした「実験発生学」に基づいてさまざまな現象が解釈された結果、学術用語として細胞分化という表現が生まれました。「実験発生学」の欠点も「細胞分化」の考え方に反映されているので、(1)この表現が、どのようないきさつのもとで使われてきたのか、(2)この表現は現代の眼からはどのように再解釈する(正しい意味を与える)のが良いか、について検討していきましょう。 「分化」というのは、“differentiation”という外語に対してつけられた和語です。そのもとである“differentiate”というのは、違いを(目で見たり感じたりして)区別するという意味です。受精卵から胚、そして成体へと発生が進むと、そ

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    zu2 2022/09/18
  • RESEARCH 後ろ足の位置の多様性を生み出すしくみ

    1.四肢動物の骨格の基構造 四肢動物には、胴体を貫く背骨(脊椎骨)がある。脊骨は形の違う脊椎骨が首の方から頚椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)、仙椎(せんつい)、尾椎(びつい)と連なったものである(図1A)。脊椎骨の長さや数は、動物種によって異なるが後ろ足(後肢)の付け根は必ず胴体の終盤にあたる仙骨(仙椎由来)を含む骨盤に接続している。これは、今生きている動物だけでなく既に絶滅してしまった恐竜や首長竜に至るまで、あらゆる動物に共通している(図1B)。つまり、脊椎骨の数や形は進化の過程で大きく変化したにもかかわらず、後肢は例外無く仙椎の位置に形成されるのである。ここで、なぜ後肢は必ず仙骨に隣接する位置にあるのかという問いが生まれる。これは四肢動物の形態形成の際にプロポーションの変化を生む後肢の位置の多様化のしくみを知ることにもつながるはずである。

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    zu2 2022/03/17
  • RESEARCH 持ちつ持たれつの生存戦略

    1.花の形と送粉者 多くの花は外側に開き、さまざまな色や形で昆虫を惹きつける (図1A)。また雄しべと雌しべは同時に成熟し、蜜を求めて花を移動する昆虫たちによって花粉が運ばれ受粉を成功させる。一方、イチジク属植物(イチジク)の花は花のうと呼ばれる袋のような器官の中に咲いており (図1B)、チョウやミツバチなどに花粉を運んでもらうことができない。さらに、同じ花のうの中にある雄しべと雌しべの成熟する時期は完全にずれており、雄花と雌花を別々の時期に咲かせる。このように閉じた空間に花を咲かせるイチジクは、花のうの中に入ることができる特定のコバチのみを送粉者とする (図1B)。イチジクとコバチの間には密接な共生関係があるのだ。

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    zu2 2022/03/11
  • RESEARCH 植物の毒とチョウの食草転換

    1.チョウと植物の深い関係 地球上に存在する昆虫の過半数は、植物をべる植性昆虫である。昆虫から動いて逃げることができない植物は、天敵が嫌がる化合物や、毒になる化合物をつくり出して身を守っている。多くの場合、植性昆虫は体が小さく限られた解毒能力しかもたないため、ごく一部の植物しかべることができない。 植性昆虫が、それまでべていた植物と異なる種の植物を利用するようになることを「草転換」と呼ぶ。チョウの場合、幼虫がべられる植物は種によって決まっており、草転換は新しい種の登場につながるきっかけになったと考えられている(図1)。 現在のチョウと植物のつながりは、互いに関係しながら進化した結果と解釈されてきた。例えば、新たな植物が誕生して新たな化合物をつくり出しチョウの幼虫にわれるのを防いだとする。しかし時が経てば、その化合物を克服する新たなチョウが登場することがある。するとさらに

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    zu2 2022/03/11
  • Special Story 圧力の変化と微生物

    地球上における生命の歴史をひもといてみると,原初の生命は,太陽から降り注いでいた,強烈な紫外線の届かない深海の底で現れた可能性が考えられる。近年,深海の熱水鉱床において,100℃前後の高温でよく育つ超好熱性古細菌の存在が明らかになり,系統学的な証拠からそれらが原始の生命に極めて近いのではないかと議論されている。 ということは,原初の生命の進化は,高水圧の環境である深海で始まった可能性があり,高圧下での遺伝子の発現の仕組みは,生命の進化のごく初期において獲得されたものと思われる。深海は非常に高い水圧下におかれた低温の暗黒世界であり,こうした環境下では生命進化のスピードも遅く,原初の生命システムの痕跡が残されていると考える人も多い。 私たちは,高水圧下での遺伝子のはたらきを調べることを目的に様々な実験を行なってきた。まず,深海から採った底泥には,大きく分けて2種類の微生物がいることがわかった。

    Special Story 圧力の変化と微生物
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    zu2 2022/02/17