とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。アゲハ幼虫模様の制御機構に関する論文がScienceに出ていた。以前にこのコーナーでの執筆をお願いしていた二橋亮君の仕事だったので、今回もお願いして原稿を書いて頂いた。 Science論文の紹介を載せてしまうと、今後、このコーナーに紹介文を投稿してくれる人がいなくなってしまいそうで怖いが、いずれにせよ、これまでに書いてくれたのは二橋くんだけなので気にしないことにした(泪)。投稿してくれるヒト、熱烈募集中です。 ************************************************************ チョウの翅に代表される昆虫の紋様の多様性には、多くの人が関心を持っています。最近の研究から、目玉模様などに関わるいくつかの遺伝子が同定され、さらに種間の紋様の違い
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Prudic KL, Oliver JC, Sperling FA. The signal environment is more important than diet or chemical specialization in the evolution of warning coloration. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Nov 28; [Epub ahead of print] PMID: 18029450 [PubMed - as supplied by publisher] 擬態しているのでない限り、警告色というのは警告の背景となるものがあって初めて意味を持つ。有毒であるとか、不味いとか。そうでなければただ目立つだけであり、捕食者にしてみ
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Richard Y. Hwang, Lixian Zhong, Yifan Xu, Trevor Johnson, Feng Zhang, Karl Deisseroth, and W. Daniel Tracey Nociceptive Neurons Protect Drosophila Larvae from Parasitoid Wasps Current Biology 10.1016/j.cub.2007.11.029 今日はハエもやるなあ、と妙に感心してしまった話を紹介しよう。 上記論文ではハエを侵害刺激(痛み、熱さなど)を伝達するニューロンの特定をめざした。ハエの幼虫は侵害刺激に合うと身をよじらせて回転する(ローリング)。GAL4-UASシステムを用いて特定のニューロン
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Nash DR, Als TD, Maile R, Jones GR, Boomsma JJ. A mosaic of chemical coevolution in a large blue butterfly. Science. 2008 Jan 4;319(5859):88-90. PMID: 18174441 [PubMed - in process] シジミチョウの一種、Maculinea alcon(以下、蝶)はデンマークではキイロクシケアリとシワクシケアリを宿主とする寄生者である。この蝶は卵を湿地にある特別な植物の芽に産みつけ孵化した幼虫はそこでしばらく育つ。後に、アリに発見された幼虫は巣の中に連れて行かれ、そこで世話をしてもらうわけである。蝶の幼虫はアリに化学的に擬態してお
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。遅ればせながら明けましておめでとうございます。色々考えたのですが新年一発目は虫以外の論文を紹介することにしました。 ←今年も宜しくお願い致します。 Thomas E. Sussan, Annan Yang, Fu Li, Michael C. Ostrowski & Roger H. Reeves Trisomy represses ApcMin-mediated tumours in mouse models of Down's syndrome Nature 451, 73-75 (3 January 2008) ダウン症候群は21番染色体のトリソミー(通常二本の染色体が三本になる)によって引き起こされる。以前から、ダウン症候群の人はがんになりにくいとする報告があったが、そうでないと
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Kikawada T, Saito A, Kanamori Y, Fujita M, Snigórska K, Watanabe M, Okuda T. Dehydration-inducible changes in expression of two aquaporins in the sleeping chironomid, Polypedilum vanderplanki. Biochim Biophys Acta. 2007 Nov 22; [Epub ahead of print] PMID: 18082130 [PubMed - as supplied by publisher] 生命活動に必須である水は低分子ではあるが、脂質二重膜でできた細胞膜を通過することはできない。ア
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Schmidt AR, Dörfelt H, Perrichot V. Carnivorous fungi from Cretaceous amber. Science. 2007 Dec 14;318(5857):1743. PMID: 18079393 [PubMed - in process] 当ブログの読者で食虫植物の存在を知らない人はいないだろう。しかし、線虫を捕らえる真菌がいることを知らない人は多いかも知れない。 例えば食用キノコとして有名なヒラタケの菌糸は麻痺毒性のある液滴を分泌し、線虫を麻痺させ、化学走性によって線虫の口から菌糸を侵入させ内部を溶かして吸収するという、我が身に置き換えるとゾッとするようなやり口で線虫を補食する。 一方、Arthrobotrysのような真
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Granado LC, Ranvaud R, Peláez JR. A spiderless arachnophobia therapy: comparison between placebo and treatment groups and six-month follow-up study. Neural Plast. 2007;:10241. PMID: 17713595 [PubMed - indexed for MEDLINE] arachnophobia(蜘蛛恐怖症)というのは恐怖症の中でも比較的有名なものである。蜘蛛が気持ち悪いという人は虫屋の中にも多い。私はだいじょうぶだけど、気持ち悪いという気持ちは良くわかる。 蜘蛛恐怖症の治療には「慣らす」というものがあるのだが、蜘蛛恐
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Ant Parasite Turns Host Into Ripe Red Berry, Biologists Discover Science Daily リンク先の写真をご覧頂きたい。二匹のアリは同種なのだが、下の、腹部が赤くなった個体は線虫による寄生を受けており、腹部には線虫の卵が詰まっている。赤い色は、線虫がアリの腹部を熟した実に擬態させて、鳥に食べさせるためであると考えられ、アリは動きが鈍くなり、腹部を上げる姿勢を頻繁にとるようになるという。実と間違えて鳥に食べられた腹部に詰まった卵はやがて排泄され、再びアリに食べられる(このアリが住んでいる熱帯雨林の樹冠は窒素源に乏しく、鳥の糞は貴重な窒素源となっている)。鳥に食べられることで線虫は遠くに移動できるというわけだ。アリは不味いので
D. A. Warner, R. Shine The adaptive significance of temperature-dependent sex determination in a reptile Nature advance online publication 20 January 2008 doi:10.1038/nature06519 以前のエントリ、フトアゴヒゲトカゲの性決定様式では、温度による性決定様式の進化についてヒントを与える、大変興味深い論文を紹介した。しかし、遺伝的なメカニズム解明のための突破口は開かれたものの、そもそもどうして爬虫類では温度なんていう不安定なものによって、性という重要な性質が決定されるようになったのだろう? その理由は明らかではない。 もちろん仮説は存在していた。それは、「その性が生まれる温度ではその性の適応度が高くなるから」というちょっと
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Dietemann V, Zheng HQ, Hepburn C, Hepburn HR, Jin SH, Crewe RM, Radloff SE, Hu FL, Pirk CW. Self assessment in insects: honeybee queens know their own strength. PLoS ONE. 2008 Jan 9;3(1):e1412. PMID: 18183293 [PubMed - in process] ミツバチでは複数の女王が共存するということは極めて稀である。これは複数の女王が生産されても、闘争によって他の女王が殺されることによる。闘争には主に大顎が使用される。 中国の養蜂業者は巣の生産性を向上させるための画期的な方法を発明した
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Todd M. Palmer, Maureen L. Stanton, Truman P. Young, Jacob R. Goheen, Robert M. Pringle, and Richard Karban Breakdown of an Ant-Plant Mutualism Follows the Loss of Large Herbivores from an African Savanna Science 11 January 2008: 192-195. アカシアの一種、Acacia drepanolobium(以下、アカシア)にはアリが住み着く。植物はアリに糖分泌液と、巣場所を提供する代わりに、アリによる防衛サービスを受けるという共生関係が成り立っている。しかし、アリと
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。Decaestecker E, Gaba S, Raeymaekers JA, Stoks R, Van Kerckhoven L, Ebert D, De Meester L. Host-parasite 'Red Queen' dynamics archived in pond sediment. Nature. 2007 Nov 14; [Epub ahead of print] PMID: 18004303 [PubMed - as supplied by publisher] 寄生者と宿主との競争について論じた赤の女王仮説をユニークな系で検討している論文。寄生者と宿主の長期的な相互作用を検討することは容易ではない。時間もかかるし、実験データにはノイズも入りやすい。 上記論文で
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。J. Halloy, G. Sempo, G. Caprari, C. Rivault, M. Asadpour, F. Tâche, I. Saïd, V. Durier, S. Canonge, J. M. Amé, C. Detrain, N. Correll, A. Martinoli, F. Mondada, R. Siegwart, and J. L. Deneubourg Social Integration of Robots into Groups of Cockroaches to Control Self-Organized Choices Science 16 November 2007: 1155-1158. 群れを作ったり、集合性のある生き物の中には、「リーダ
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