顔がむくみ、空せきが続いた。疲れた顔の夫は「仕事がたまっている。やることがいっぱいある」と言い残し、職場に向かった。 西日本で展開する小売りチェーンに勤めていた当時47歳の男性はこの日、急性心臓死で亡くなった。妻はその朝、出勤する夫の様子に異変を感じていた。2006年12月のことだ。 男性が倒れたのは、入院する母を見舞いに行った病院の待合室だった。携帯電話には、倒れる直前まで取引先と話していた履歴が残っていた。 男性は小売りチェーン傘下の約100店舗で扱う家電製品のバイヤーだった。業者から商品を仕入れ、店舗を回って販売指導を行った。新規開店の準備のため、早朝に起きて日帰り出張をくり返した。 亡くなる2年半前に課長に昇進し、「がんばって会社を大きくすれば、オレたちの暮らしも安定する」と口癖のように話した。死亡前2カ月間の早出・残業は月平均140時間にのぼり、佐賀労働基準監督署は09年、労災と