米国の化学者、アンソニー・トゥー(台湾名・杜祖健)コロラド州立大名誉教授(86)がオウム真理教元幹部の中川智正死刑囚(54)と東京拘置所で5年以上にわたって、面会を重ねている。「毒性学の権威」と「テロリストとなった元医師」。住む地も年齢も離れた奇妙な組み合わせである。彼らを結びつけるものは何か。偶然の出会いを追った。【岸達也/統合デジタル取材センター】 【写真】旧上九一色村のオウムの工場・製造施設を調べる捜査員 ◇台湾生まれヘビ毒の研究の権威 「(猛毒の神経剤)VXの症状と考えて矛盾はありません--」。今年2月下旬、日本のある弁護士を介し1通の手紙がトゥー氏の元に届いた。差出人は中川死刑囚。マレーシア・クアラルンプールの国際空港で発生した金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件について、正男氏の症状や自身がVXを取り扱った時の経験なども分析し、「暗殺」でVXが使用されたことを示唆する内容だ