京都市の地下に長大なトンネルを掘る北陸新幹線の新大阪延伸計画で、市内の一部銭湯が懸念を募らせている。銭湯の大半が、きれいで豊富な天然の地下水を沸かして使っているためだ。巨大な穴をうがてば、地下水が枯れたり、重金属やヒ素などで汚染されたりする恐れが消えない。京都が「銭湯の聖地」として全国に名をはせている一因に、地下水という自然の恵みが挙げられる。銭湯関係者は「水への影響が恐ろしい。枯れれば銭湯はやめる」と漏らす。不安が湯煙のようにもうもうと立ち上る。 銭湯関係者によると、市内約80軒の銭湯のうち、風呂に水道水を用いているのは数えるほどで、ほとんどが地下水を活用しているという。都市で、ろ過も不要なほどきれいな水が安定的に湧くのは、全国的にも極めて珍しい。全国から銭湯ファンを引き寄せ、近年では訪日客(インバウンド)の来訪も増えている京都の銭湯のブランド力は、地下水が支えている面もあると言える。