なぜウクライナ戦争は起こったのか? ──トッドさんは米国についてどうお考えですか。 トッド 欧州の指導者階級は、米国と足並みをそろえようと躍起になっています。しかし、いまの米国社会を見ると、歴史上類例のない退行の真っ只中にあります。 米国が欧州にやって来たのは1944年のことですが、あの頃の米国は、世界の工業生産の45%を占める国でした。生活水準を見ても、米国は欧州の1〜2世代先を行っていました。そんな米国がNATOを作り、私たちをスターリンから守ったのです。 ところが、いまの米国はどうでしょうか。死亡率が上昇し、平均寿命が短くなっています。フランスと米国を比較すると、米国の平均寿命は6年も短いのです。米国は極端な不平等社会になっています。自由の国だと言っているわりには収監率が世界一であり、これは黒人に対する人種差別と関わっています。米国の政治は金銭で動いています。 こんな状況の米国を、い