ノンフィクション作家・佐野眞一さん〈4〉 「日めくり」のように過ごす[掲載]2011年2月27日自宅の仕事場は多くの書物と資料であふれかえっている=千葉県流山市、郭允撮影著者:宮本 常一 出版社:岩波書店 価格:¥ 735 年明け早々、NHK・BSハイビジョンの「日めくり万葉集」という番組に出た。万葉集から好きな歌を選び、その理由を語るミニ番組である。出演する気になったのは“日めくり”という文句が、いまの心境にひどくぴったりきたからである。 およそ1年前、私は緊急入院して大手術を受けた。幸い手術は成功し、短い入院期間で退院することができた。それ以来、大それた仕事の計画など立てず、一日、一日をそれこそ“日めくりカレンダー”のように過ごしていこうと心に決めた。 番組で選んだのは、その気持ちを投影して大伴家持が大病の癒えた後に詠んだ歌と、対馬に着任した防人(さきもり)の歌だった。 対馬の山にか