「約束が違うじゃないですか。ちょっと困るんですよね」。受話器から聞こえてきた怒りを含んだ声。数日前に取材した区役所の担当課長からの電話だとすぐに分かった。子供たちのイベント取材で「顔がわからないように撮影を」と頼まれたのに、うっかり忘れて顔が分かる写真を載せてしまったのだ。電話を受け顔から血の気が引いた。でも、なぜ、顔が写っていてはだめなのか。うかつにもそのときは聞きそびれたが、あとで知ったのは、ほほえましいイベント取材であっても、気を配らねばならないさまざまな事情があるということだった。(社会部 小川原咲) いい写真を撮りたい 記者になって1カ月ほどたった5月。大阪市内の区役所で、地元の園児と小学生が参加して植物の苗を植えるイベントがあることをHPで知り、取材に行った。 その1週間前、植物園で撮影したバラとシャクヤクの写真が、構図を変えて何十枚も撮ったものの、ほとんど使いものにならず、先
砂防を目的とする河川や渓谷の堰堤(ダム)といえば、コンクリート製の密閉型建造物を思い浮かべがちだが、近年は渓流の連続性や環境保全といった観点から、小さい砂までせき止めるコンクリート製の不透過型ではなく、複数の開口を持つ鋼製の透過型堰堤の需要が高まっている。1979年から現在まで700基以上を設置した神戸製鋼所は、自然との調和をテーマにした透過型堰堤の設置を進める。 「中小規模の出水時に無害な土砂を流して、堰堤の上流側に土石流をとらえるだけの空容量を確保し、土石流発生時にそれを捕捉するのが鋼製の透過型堰堤の役割です」(同社の鉄構・砂防部営業室の戸田太課長) 国土交通省によると、2002年のデータで土石流の危険がある渓流は全国に18万カ所以上ある。このうち、付近に人家が5戸以上あり、砂防ダムを設置する必要がある場所は9万カ所近くに上る。整備率は09年度末で22%。鋼製透過型はうち20~25%程
クマが夜の森の地面に伏せている。右手の指を大きく広げて押さえつけているのは、息絶えたニホンジカだ。 「尻の方からシカを食べているところなんですよ」 長野県駒ケ根市、中央アルプスの麓の木立に包まれた仕事場で、動物写真家の宮崎学さんが説明してくれた。 ■ 一瞬、わが目と耳を疑った。本州にいるツキノワグマは、草木の根や新芽、果実といった植物食が中心で、他にはアリやハチ、カニなどだけを食べているのではなかったか。それが、何と大型獣を食べている。にわかには信じられない光景だ。 「では」。宮崎さんがパソコンで次々、画像を見せてくれる。シカの内臓が写っている。それをクマがむさぼっている。 「自然界の報道写真家」を自任する宮崎さんが、森にセットした無人ロボットカメラで撮影した記録作品だ。 「クマは森の掃除係。アフリカのハイエナと同じです。だから何でも食べます。それを現
環境省は11日、北海道羽幌町の天売島で、絶滅の危険性が高まっているウミガラス(オロロン鳥)のひな9羽が生まれたと発表した。天売島は国内で唯一、ウミガラスの繁殖が確認され、同省が2001年から保護増殖事業を行っている。 環境省の羽幌自然保護官事務所が、繁殖場所に設置した観察用ビデオカメラで、6月29日から7月1日にかけて9羽のひなが誕生したのを確認した。ビデオカメラには、7日までに体長約10センチのひなが羽ばたく練習をしている様子が写っているという。順調に育てば7月下旬から巣立ち始めるとみられる。 ウミガラスは北大西洋の亜寒帯海域などに分布する体長約40センチの海鳥。繁殖のため天売島へは約50年前には推定8千羽が飛来していたが、近年は20羽前後に激減。環境省のレッドリストで絶滅の危険性が最も高い「絶滅危惧IA類」に分類されている。
「えっ、車窓から富士山が見えないの!」「駅に、待合室も切符売り場もないなんて」-。JR東海が平成39年の開業(東京-名古屋間。名古屋-大阪間は57年)をめざすリニア中央新幹線で、地上走行区間の軌道を「土管」のようにコンクリート製の防音フードですっぽり覆う計画に、沿線の自治体から不満の声が噴出している。4カ所の中間駅もできる限りシンプル化してコストカットする方針。鉄道ファンや沿線住民は、世界に誇るべきリニアの“雄姿”を楽しみにしているのだが…。“下水道管”の中を走るのか… 「下水道管という感じ」 横内正明・山梨県知事は、防音フード計画を酷評する。 リニア新幹線は、東京-名古屋間約286キロのほとんどがトンネルで、地上部分は全体の13%の約38キロしかない。 このわずかな地上走行区間は山梨、長野、岐阜の3県を通ることから、各県は「リニアを眺められる県」として国内外にアピールする好機と意気込んだ
水中を泳ぐ姿で描かれた束柱類「デスモスチルス」の復元画。右下は肋骨の断面図でスポンジ状になっていることがわかる(足寄動物化石博物館・新村龍也学芸員提供) 日本や北米西海岸などの沿岸に3千万~1千万年前ごろに生息、生態が謎の哺乳類の一種「デスモスチルス」が海で生活していたとする研究結果を大阪市立自然史博物館の林昭次学芸員らのチームがまとめ、3日付の米オンライン科学誌プロスワンに掲載された。 主な生息場所が陸上か海中か見解が分かれていた。チームは化石で見つかった骨が密度の低いスポンジ状になっていることを突き止め、「体重が軽くなるように進化することで、上手に泳ぐ能力を獲得した」と分析している。 デスモスチルスは、のり巻き状の柱を束ねたような歯が特徴的な束柱類の一種。チームは陸生と海生の代表的な63種類の哺乳類について、上腕骨や肋骨、背骨の内部構造が陸と海とでどう異なるかを解析した。 その上で、デ
ツキノワグマなどの大型野生動物が生息できる森を再生するために活動している自然保護団体「日本熊森(くまもり)協会」(兵庫県西宮市分銅町)が、奥山の実態を調査する「日本奥山学会」を立ち上げた。同協会の森山まり子会長(64)は「奥山の危機的な状況を学会を通して多くの人に伝えたい」と話している。 同協会は、尼崎市立武庫東中学校で理科教師をしていた森山さんが平成9年設立。会員約2万4千人が荒廃した奥山を野生動物が生息できる森に再生するため、毎年春と秋に各地で広葉樹を植林したり、寄付を募り原生林を買い取るナショナルトラスト運動などを展開している。 しかし、残された奥山からも野生動物が消え始めているという。今年7月に宍粟市で行った調査でも10年前のクマの爪痕などがあるだけで、動物の姿はほとんど確認できなかったという。ナラなどの広葉樹が集団枯死する「ナラ枯れ」も深刻だった。
人間が知っておくべき常識 クマによる被害の報道が相次いでいる。秋田県のクマ牧場で起きた痛ましい死亡事故は特殊なケースだが、近年は数年おきに異常出没が報じられ、人里に現れたクマが射殺もしくは捕獲されたという話は、珍しくなくなっている。 南は熊本県の「くまモン」から北は北海道夕張市の「メロン熊」まで、ご当地マスコットキャラクターとして人気が高いクマだが、現実の彼らは危険な隣人という側面も持っている。少し山に入ればクマの生息域となる日本で、人間が知っておくべき知識を本書は教えてくれる。 日本のクマには、本州・四国にすむ比較的小型のツキノワグマと、北海道に生息する大型のヒグマの2種類がいる。春に目覚め、6~7月の繁殖期を経て秋に栄養を蓄え、冬眠に入るのが生活サイクルだ。 日本の天然林に多いブナ類の実は、クマにとって重要なエサだが、周期的に豊作と凶作を繰り返す特性がある。これが、秋のクマ出没に大きく
京都市で16日に行われる「五山送り火」の一つ「大文字」の護摩木として、東日本大震災の津波で流された岩手県陸前高田市の松を使う計画が、放射性物質の汚染を不安視する声を受け、取りやめになったことが6日、関係者への取材で分かった。 大文字保存会は京都に松を運ばず、陸前高田市で迎え火として使う方向。代わりに、遺族が祈りの言葉などを書き込んだ松の護摩木を写真撮影して別の木に書き写し、大文字で燃やすよう調整している。 京都市文化財保護課や同保存会によると、報道などで知った市民から7月に入り、「放射能汚染が心配」などの声が寄せられた。松から放射性物質は検出されなかったが、保存会は議論の末、8月に入って取りやめを決めた。
東日本大震災でエネルギー政策の転換が叫ばれる中、重力と浮力だけを利用して電気を発生させる装置をさいたま市浦和区の会社役員、阿久津一郎さん(80)が発明した。パチンコ玉を内蔵したピンポン球を高い位置から落として歯車を回して発電、水の入ったパイプの中で球を再び浮力で上昇させて循環させるもので、平成22年10月に特許を取得した。実用化されれば、天候や時間に左右されない“究極の自然エネルギー”として注目を集めそうだ。(安岡一成) 阿久津さんが開発した装置は、容量約10リットルのアクリル製の箱に、高さ約2メートルの「蓄水管」「上昇管」「落下管」という3本のパイプがついただけの簡単な構造。上昇管には水の逆流を防ぐため、落下管には圧力を保つための弁がそれぞれ取り付けられており、上部でつながっている。落下管には発電機と連動した歯車が取り付けられ、回転すると電力を発生させる仕掛けになっている。 まず、落下管
健康な食生活と遺伝子の関係を解き明かすシンポジウム「傷ついた遺伝子があなたの寿命を縮める!」(主催・昭和大学、産経新聞社、特別協賛・フォーデイズ)が18日午後、福岡市中央区のアクロス福岡で開かれ、約1800人の参加者が熱心に耳を傾けた。 昭和大学医学部の塩田清二教授と小川哲郎准教授、遺伝子栄養学研究所の松永政司理事長がそれぞれ講演。食生活の改善によって遺伝子の働きをコントロールし、生活習慣病予防などに生かす「遺伝子栄養学」の最新成果を披露した。また、魚介類や豆類に多い「核酸」と呼ばれる成分が予防には効果的とする研究結果なども発表された。 ゲストとして参加した俳優の辰巳琢郎さんは「昔ながらの食生活に立ち返って考えるべき。空腹感を楽しむくらいがちょうどいい」と話し、飽食に慣れた現代人に食から始める健康づくりを呼びかけた。
「俺がやらずに誰がやる 負けてたまるか 刑事魂」。刑事の誇りや悲哀、使命感をつづった歌をまとめたCD「警察賛歌」が自主制作された。作詞を手がけたのは警視庁の現職刑事、照井辰己警部補(58)。「治安を守る警察官の誇りと使命を胸に抱いてほしい」。照井警部補はこんな思いを込めたという。 照井警部補は窃盗事件の捜査を担当する捜査3課に所属。36年の警察人生の多くを刑事畑で歩んできた。自身の経験を基に書いた「我ら機動捜査隊」「刑事の詩」「刑事の詩~みんなの応援歌~」「盗犯刑事の詩」「行くぞ機動隊」の5曲を収録した。 歌詞づくりを始めるきっかけになったのは、平成18年に在籍していた第1機動捜査隊で隊歌を作ったこと。その際に知り合った作曲家の川又和男さんと交流を深め、CDの制作に取りかかった。不祥事などが相次ぐ中、「警視庁全体が元気になってほしい」との一念からだったという。 歌詞の裏には携わった事件への
第35回千葉「正論」懇話会(会長=千葉滋胤・千葉県商工会議所連合会顧問)が2日、千葉市美浜区のホテルニューオータニ幕張で開かれ、筑波大名誉教授の村上和雄氏が「遺伝子『スイッチ・オン』の生き方」と題して講演した。 遺伝子研究の世界的権威である村上氏は遺伝子にはスイッチのオンとオフの機能があり、その状態によって働きが変わると解説した。その上で、日本人は「いただきます」「ありがたい」「お天道さまが見ている」といった自然に感謝する精神文化の遺伝子を持っており、「今は遺伝子のスイッチがオフになっているが、これをオンにして、日本が世界から尊敬される国になるという国家目標を持てれば、21世紀は日本の出番が来る。日本は経済大国というよりも、文化大国として世界に役立つ国になれるだろう」と話した。
米国の反捕鯨団体シー・シェパード(SS)が今冬の調査捕鯨妨害のために投入した新抗議船「ゴジラ号」に対し、オーストラリアが昨年末、暫定で船籍を与えていたことがわかった。SS船で豪船籍は初めて。日本側は海の安全を損ねるSS船の旗国にならないよう要請してきたが、豪政府が無視した形だ。強制捜査の可能性も ゴジラ号は22日、豪南部のホバート港に帰港している。すでに今期、南極海で捕鯨船攻撃を行っており、日本側の抗議で今後、豪捜査当局が強制捜査に入る可能性も指摘されている。 これまでSS船の船籍を認めてきた国は英国、オランダ、トーゴなど。日本はSSが妨害を行うたびに、航海の安全を定めたさまざまな国際規約に違反するとして、世界各国に船籍を認めないよう要請してきた。 英国、トーゴはこれを受け船籍を剥奪。SSはその後、無国籍船のまま攻撃を続けたこともある。しかし、反捕鯨国でもあるオランダは「(SSの行為は)テ
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