明るいカラーに手触りのいいファブリック素材。近年のグーグルのプロダクトに温かさを感じるのは、同社のハードウェアデザイン部門を率いるアイビー・ロスの哲学が反映されているからだ。色や音、手触りや匂いの力を信じる彼女は今、世界最大のテック企業のプロダクトを通して、テクノロジーに人間性を取り戻そうとしている。 神経美学とテクノロジー 取材日のアイビー・ロスは、黒のタートルネックに黒のパンツ、黒のブーツという装いだった。多くのデザイナーがそうするように、彼女もまた黒の衣服しか身に着けないのかと思い撮影の後に訊いてみると、今日はたまたま黒を着たい気分だけなのだと教えてくれた。 「黒はほかの色を吸収するでしょう。昨日大きなイベントでステージに立ったばかりだから、そのぶん今日は自分の内側に籠もっていたい気分なの」と、ニューヨークで新製品発表会を終えた直後に来日したグーグルのハードウェアデザイン・バイスプレ