ラテン・シリア、キプロス島、ラテン・ギリシアなど、12世紀末以降各地で建設された十字軍国家。その700年にも及ぶ歴史を明らかにするのが櫻井康人著『十字軍国家』(筑摩選書)です。同書について、中東イスラーム史を専門とする堀井優さんに書評していただきました。ぜひご一読ください(『ちくま』9月号より転載)。 1095年のクレルモン教会会議での教皇ウルバヌス2世による呼びかけで始まった十字軍運動は、キリスト教会の敵と戦うことによって得られる贖罪を目的とし、当初の聖地十字軍にとどまらず、約700年間持続した。本書は、この運動を担った十字軍士が樹立した諸国家の歴史を追ったものである。ヨーロッパの周縁にあって、キリスト教世界の理念に支えられた十字軍諸国家の命運は、支配層をなす人々の思惑や周辺諸勢力の動向に左右された。そうした経緯が、政治的事件を中心に長期にわたって綿密に叙述される。 十字軍諸国家が存在し
![十字軍国家、キリスト教世界、イスラーム勢力圏|筑摩選書|堀井 優|webちくま](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/ecc926f27c0d33634e42422c8199f41f0d439739/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fchikuma.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2F1%2F4%2F660m%2Fimg_14ca27fbc9f4b153bd630ab79b96e135125833.jpg)