プロコピオス『秘史』──翻訳と註(1) プロコピオス『秘史』──翻訳と註(1) 橋 川 裕 之 ・ 村 田 光 司 プロコピオスのアネクドタと呼ばれる書物は、皇帝 ユスティニアヌスと彼の妻テオドラ、そしてベリサ リオスその人と彼の妻への非難および喜劇を含む。 『スーダ』 史叙述の流れを把握するうえで、きわめて貴重かつ 著名なテクストでありながら、わが国ではいまだ全 訳がなされていない。この空白ないし不在を埋める ことを我々はわが国のビザンツ史家としての急務と みなし、アッティカ体で書かれたプロコピオスの個 性的な原文になるべく忠実かつ正確な日本語訳の作 成を企図した。全部で 30 章からなる作品のうち、 本号で訳出するのは 1 章から 10 章までであり、11 章以降の訳は次号に掲載する予定である。なお我々 が翻訳にあたって参照した批判校訂版は、1963 年 に刊行された J・ハウリ