武士の発生武士の発生や発展については、従来、律令(りつりょう)地方行政の弛緩(しかん)の下で自衛のために地方の新興富農や領主が武装したことに始まり、貴人の「さぶらい」や朝廷の「もののふ」などをステップとして漸次発展したと考えられてきた。しかし、この古典的見解は、富農や領主が直接武士化したことを語る史料の欠如、中世武士とよばれる者の先祖が系図その他でいずれも特定の貴族から出ている事実など、多くの点で事実に適合しないため、近年さまざまの形で批判されてきた。そしてそのなかから多様な新見解が現れ、現在ようやく、前述の語義の起源と変化とが合致するような形で総合的な見通しがたてられるようになった。 まず発生の問題に限ってみてみよう。10世紀の前半のころから京都と地方に登場する原初の武士は、社会史的にみてけっして地方の富農・領主そのものではなく、むしろ農業経営とは別の世界で合戦そのものを業とする者=「つ
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