メイン球場からブルペンに戻ってみたが、もう誰も投げていなかった。 ならば、こっちはどうなってるのかな……と隣りの室内練習場の重いトビラをガラガラと開けた途端、目の前でしゃがんでいたトレーニングウェア姿がスッと真っすぐに立ち上がって、軽く頭を下げてくれる。 この国には、目礼という美しい挨拶があることを思い出させてくれた。 ソフトバンク関東地区担当スカウト・荒金久雄。 この人は、いつもこうだ。 どこの球場で出会った時も、こちらのほうにきちんと体を向き直してから挨拶を返してくれる。 大分の中学からPL学園に進み、青山学院大の4年間も併せて、俊足・好守の外野手として活躍し、2000年ドラフト5位でダイエー(現ソフトバンク)に入団した。 スリムなユニフォーム姿に全身のバネの効いたベースランニング、そしてしぶといチームバッティング。とりわけ、内野手のメカニズムを持った敏捷で正確なスローイングは、今でも