『本報告書の調査は…事故の責任を問うために行われたものではない』。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)の報告書には冒頭、必ずこの一文が入る。調査は法律上、再発防止に役立てるために行われ、刑事責任を追及する警察などの捜査とは異なることを明記しているのだ。 ところが現状は違う。警察庁と旧運輸省が昭和47年に交わした「覚書」とその細目に、現場保存や物件の押収などで警察の優位を確認し、事故調は警察の鑑定依頼に原則応じると定めている。どんな事故でもほぼ例外なく、報告書が鑑定書と名を変えて警察の手に渡る。 運輸事故の場合、捜査権のない「調査」には加害企業の協力が不可欠。ところが調査に応じ、資料を提供すればするほど刑事処罰対象になりやすくなるという図式が成立してしまう。 □ ■ □ これは国際的には“非常識”だ。調査による原因究明を第一にするため、刑事処分を「免責」するのが国際的な常識にな