私には彼氏がいた。優しくて繊細で気弱な彼氏だった。私のことを愛してくれた。 でも、そのときの私は、疲れていた。両親が事故で死んでしまったり、 就職で失敗したりと、いろいろと大変だったからだ。頼れる人が欲しい時期だった。 だから、私は彼氏に「別れよう」と告げた。でも、彼氏は首を縦には振らなかった。 彼氏は泣いた。叫んだ。今まで聞いたことないような声で怒鳴った。 私は、こんなときに強引さを出して欲しいんじゃないのに、なんて思った。 そんな彼に嫌気が差して、「さよなら」と告げて家を飛び出そうとした。 そのとき、彼氏が台所に飛び込むのが見えた。もしかして、そう思った私は、走った。 そのとき、声が聞こえた。「別れるなら死ぬ」。その声に驚いて戻ると、 彼氏は包丁を自分の首もとにつきたてていた。「やめて!」私は叫んだ。 こんな最低な人だとは思わなかった。大嫌いになった。 こんな人を彼氏に選んだ自分も大嫌