毎年、5月末から6月中旬にかけ、天安門事件に関する報道が、我が国のメディアにも溢れる。 今年は事件から30年目の節目の年であり、習近平政権下で悪化する一方の人権状況に対し内外から強い懸念が表明され、米中間の厳しい対立はエスカレートするばかり。加えるに香港では、身柄を拘束された容疑者の中国本土引き渡しが可能となる「逃亡犯条例」の改定に反対する大規模な街頭デモが連日繰り返されている――であればこそ、1978年末の対外開放以後の中国で悪化する人権状況の“原点”ともいえる天安門事件関連報道が、例年にも増してメディアを賑わせるのも当然だろう。 30年前、天安門事件をNHKはどう報じたか だが30年前の天安門事件であれ、現在進行形で繰り広げられている香港の動きであれ、我が国のメディアが激変する事態を“情緒的”に報道するほどに、問題の本質から外れてしまうように思えて仕方がない。 たとえば天安門事件をリア