はじめに 完全に自己調整的な市場など存在しない! 1944年、第2次世界大戦の最中に書かれた本書において、ポラニーは、豊富な経済史の知識を駆使してこのことを強調した。 市場にすべてを任せることが、最善の経済政策である……。そのような市場原理主義のドグマを、ポラニーは歴史的な観点から打ち砕くことを試みたのだ。 彼の研究は、今日、まさに「自己調整的市場」というドグマを掲げる新自由主義が席巻する中、改めて大きな注目を集めている。 新自由主義は、政府の介入を抑えた自己調整的市場においては、貧困者もふくめてすべての労働者が経済成長の恩恵にあずかれるという「トリクル・ダウン」理論を掲げている。 しかしポラニーによれば、歴史的にいってそのようなことは決して起こり得ない。むしろこのドグマこそが、世界を破滅に陥れる危険をはらんでいるのだ。 「大転換」――それは、世界史における2つの転換を意味している。 1つ