2004年6月、記者はこの欄で、ソフトウエアのテストに関するある記事を執筆した。タイトルは「なぜ『テスト』は軽視されるのか?」である。この記事では、IT業界で“テスト軽視”の風潮が広がっている現実を語り、その改善を訴えた。「その通りだ」「今その対策を打っている」――。読者の皆様から、さまざまなご意見をいただいたことを覚えている。 それから6年半近くが経った今、この状況はどうなったのか。記者は日経SYSTEMS 2010年12月号で「バグをなくそう 悪条件に負けないテストの秘訣」と題して、テストに関する特集を担当した。ここで多くの開発現場を取材した結果、今ではテスト軽視の風潮はほとんど見られなくなったと感じている。現場にはテストの計画書がしっかりあって、品質目標も明確になってきた。テストの技法や管理に関する教育も、かなり進んでいるようだ。 どんどん難しくなる「テスト」 ところが、テスト軽視の
『折れた竜骨』は、魔法が存在する十二世紀末のヨーロッパを舞台にしたミステリです。 魔法とミステリの取り合わせに面食らう方もいらっしゃるかもしれませんが、幽霊や超能力など、現実にはあり得ない力を援用するミステリはけっこうあるのです。私はかつて、それら特殊な設定を用いたミステリを、心躍らせて読んだものでした。読者とのあいだに交す約束事さえしっかりしていれば、その約束事がたとえこの世のものでなかったとしても、ミステリは成立する。そこにミステリという知的遊戯の懐の深さを見たからです。 本作がどこかの誰かに、かつて私が覚えたような昂奮を与えてくれることを願ってやみません。 ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の
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