世界史上最も有名なテキストのひとつである『創世記』のなかに「ゴーレム」という謎めいた言葉が登場する。これは古ヘブライ語で「胎児」という意味をもち、神の被造物である人間の象徴であるとも、または、ユダヤ教カバラ主義の秘儀として伝承されてきた最古の人造人間のこととも言われる言葉だ。これらの解釈についてはユダヤ教の立法者や聖書学者のなかでも意見が多数に分かれるところであるが、ゴーレムたちが農耕や戦争などの各方面で活躍した記録は『創世記』に続くテキストにも頻出し、今日のゴーレム史学的観点から言えば、語義的・解釈的な問題ではなく、ゴーレムによってどのように歴史の流れが変えられたのか、という問題に注目がおかれている――世界史上、ゴーレムが登場したことのインパクトとは何であったのか? ドイツを中心としたゴーレム学(Golemnia)の徒が心血を注いでいるのはこのポイントなのだ。 例えば同じく旧約聖書のひと