アリアナ・ハフィントン『誰が中流を殺すのか アメリカが第三世界に堕ちる日』(阪急コミュニケーションズ) 本書のことは冷泉彰彦氏の「アメリカは「第三世界に堕ちる」のか?」で知ったのだが、江坂健さんに献本いただいた。 読んでいて何とも憂鬱になる本だった。この本は「第三世界アメリカ」という嫌な感じの言葉を最初に掲げ、アメリカは富めるものと貧しいその他大勢が二極化する第三世界のような国になるぞと訴える警告の書である。本書が憂うのはアメリカにおける中流層は「絶滅危惧種」になろうとしている現実である。 多くのアメリカ人は親の世代よりも貧しい、下層に生まれながら上にのし上がれるアメリカ人は少数、といった話は日本でも言われる話だが、本書がターゲットとする「安定した職を持っていた人、大学卒の学歴を持っている人、税金をきちんと払い、老後のために貯金し」ていた中流層が80年代以降ずっと痛めつけられ、そして200