批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。 【写真】家賃4万7千円のアパートに暮らす政治家 * * * 自民党総裁選の報道が過熱している。重要な政局であることは疑いない。 とはいえ、派閥の数合わせや大物議員の動静が連日報道される様子にいささかうんざりするのも確かだ。私たちはこの30年、こんな人脈依存の密室政治から手を切るためにこそ二大政党制を目指してきたのではなかったのか。時計の針が逆戻りした感がある。 他方で野党第1党の立憲民主党にも失望するばかりだ。同党は9月前半に次期衆院選公約を2度にわたり発表したが、本気で政権奪取を目指しているようには思えない。 いま発表されている12の項目は、夫婦別姓やLGBT平等法、ネット中傷対策といった同党岩盤支持層を強く意識した政策が中心で、そこにモリカケ再調査や学術会議人事再任