李 啓充 医師/作家(在ボストン) (2978号よりつづく) 20年以上前の昔の話であるが,ハーバード系の医療施設に研究留学したばかりのころ,医療債務の取り立て会社から,「お前は病院に対する支払いを滞納しているからけしからん。早く払え」とする内容の手紙を受け取り続けたことがあった。 取り立て会社からの催促状 取り立て会社によると,産まれたばかりの娘が救急外来を受診した際の医療費が未払いだというのだが,そもそも救急外来を受診した理由は主治医を受診した際に実施した採血検査で血小板の値が異常に低く出たことにあった。「採血時の手際が悪くて血液を凝固させたせいとは思うが念のため再検査を受けてほしい」と,電話で主治医に指示されたのである。しかし,連絡があったのが夕刻であったため,一見したところ何の異常もなくぴんぴんしている娘を,夜間の救急外来に連れて行くことになったのだった。 妻と私は,「すぐに採血し