社会保障のあり方がさかんに議論されている。社会保障は本来、広く社会保険や社会福祉一般を指すものであり、制度の総体として捉えられる。日本でも昨今、財政健全化や再分配といった観点から「社会保障と税の一体改革」が注目を集める一方で、最低賃金額の改定や生活保護法の改正が関心を呼んだ。 医療保険も社会保障の一環であり、実際に日本をはじめ多くの先進国では皆保険制度として公的に運営されている。一方、米国でSocial Security(社会保障と訳される)と言えば、年金制度や障がい者保険を指すことが多い。米国において医療保険は原則個人が自らの責任で取得すべきとの考え方が一般的で、高齢者や貧困者を対象としたものを除き、医療保険そのものを社会保障とみなすことはなかった。 本稿では、2014年から本格始動した医療保険制度改革、いわゆるオバマケアとその影響について考察する。この改革は、米国有史以来で最も大きな政