25 発がんリスクの代表例――甲状腺がんの基礎知識。 チェルノブイリの原発事故では、白血病など、多くのがんが増えるのではないかと危惧(きぐ)されました。しかし、実際に増加が報告されたのは、「小児の甲状腺がん」だけでした。小児甲状腺がんが増加した最大の原因は、旧ソビエト政府が、当初、事故を認めず、初動が遅れた点です。この点、福島第一原発では、まずまず適切な対処がなされてきたと言えます。 放射性ヨウ素(I‐131)は、体に入るとその30%程度が甲状腺に取り込まれます。これは、甲状腺ホルモンを作るための材料がヨウ素で、甲状腺がヨウ素を必要としているからです。 普通のヨウ素も放射性ヨウ素も、人体にとってはまったく区別がつきません。物質の性質は、放射性であろうとなかろうと同じだからです。たとえて言えば「食べ物があったので食べてみたら、毒針がついていました」ということなのです。