石井 まず最初に一般的な誤解を解いておくと、「取材で危険な目にあわないんですか」とよく聞かれるんですが、身の危険を感じたことは一度もありません。犯罪者だろうと薬物依存者であろうと、みんな1対1で会ったらごく普通のひとりの人間です。本当に危険だったら、私なんてとっくに死んでいますよ(笑)。 ヤクザだから怖いとか、人殺しだから怖いとか、そういうバイアスを持たずにひとりの人間への素朴な信頼を出発点にしています。こちらのおびえや警戒心は相手にもすぐ伝わりますから。その上で肝心なのは、その人が「語りたくなる」場をどうつくるかに尽きると思います。 ――具体的にはどういうことでしょうか。 石井 社会の底辺だったり外側で生きてきたような人は、それまでの人生で自分の体験や感情を否定され続けてきたので、なかなか胸襟を開いて語りたがりません。本音を親に言えば叱られるし、学校で話せばドン引きされるし、警察で話せば