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ブックマーク / d.hatena.ne.jp/zoot32 (15)

  • 『紙の月』 - 空中キャンプ

    人間関係において、他者に何かを与えるということが、いまだによくわからない。自分は長らく、与えることのできる人間になるべきだと考えてきた。見返りを期待することなく与える姿勢を持つ必要があると。純粋に、贈与をしたいという感情の発露として、与える側の人間になれないものかと思案してきたが、そのような考えはやや単純だったし、与えさえすればいいというものではないらしいと気づくまでに時間がかかってしまった。仏民族学者、マルセル・モースの『贈与論』は、世界のさまざまな民族、共同体における贈与の形態を研究したテキストだが、同書では「どんな社会においても、贈り物の性質の中には期限付きでそれを返す義務が含まれている」「十分にお返しをする義務は強制的なものである」と論じられている。モースが正しいとすれば、どうやら、返礼を欠いた贈与は両者の関係を破壊してしまうらしい。 銀行で横領した巨額の金を、恋人との逢瀬でひたす

    『紙の月』 - 空中キャンプ
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    F-name 2014/11/24
  • 静岡にいったことはありますか - 空中キャンプ

    帰りの電車のなかでおかしな男に絡まれた。きっかけは、閉まりかけのドアにわたしが飛び込んだことだ。むりに入ったので、閉まるときに、ひじのあたりががつんとドアにぶつかった。すると、近くにいた土木作業員風の若い男(坊主頭、ピアス)がわたしに向かって、「迷惑なんだよ、オイ」「オマエみたいな奴がいるとむかつくんだよ」と悪態をつきはじめた。もとはといえばわたしが悪いのだが、ややこしいことになった。 しばらく無視をしていたが、「聞こえてるんだろう、テメー」「オイ、このやろう」などと言い続けるので、しかたなく急いで別の車両に移動した。もう、まいったなあ。ところが、移動したとなりの車両でしばらく立っていると、あろうことか、そいつもわたしを追ってくるではないか。どうしていいかわからない。男は「逃げんじゃねえ、オイ、テメー」と因縁をつけてくる。うーん、ややこしすぎる。しばらくうしろを向いて立っていたが、さすがに

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    F-name 2009/06/03
  • とりあえずやってるうちにできるようになる - 空中キャンプ

    デジタルカメラが普及してから、カメラを趣味にしている人たちの腕前、その全体的なレベルが一気に向上したという話を聞いたことがある。撮った後、すぐに結果を確認できること、デジタルデータなので無制限に撮れるため、たくさんの写真を気がねなく撮っていくらでも練習できることなどがその理由らしい。なるほど。 わたしはこうした「とりあえずやってるうちにできるようになる」といったたぐいの話がすきだ。前準備とか、研修とか、事前の慎重な検討といったことよりは、考え込まずにひとまず現場にでてあれこれやってみる、という姿勢がすきなのだ。もちろん現実はそれほど単純ではなく、トレーニングは重要だし、現場で学んだことをフィードバックさせて、もう一度あらためて学習しなおす必要だってあるのだけれど、なにがともあれいったん経験してみる、というのはけっこうたのしいとおもう。 わたしは友人に美容師が何人かいるのだが、彼らの話を聞く

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    F-name 2009/05/30
  • 飲み会でとなりに座った女の子 - 空中キャンプ

    エヴァンゲリオン』の監督である庵野秀明さんは、飲み会でとなりに座った女の子に自慢できるアニメを作りたい、という気持ちで『エヴァ』を作ったという。とてもいい話である。わたしはこのエピソードがすきだ。なんだか元気がでてくる。この話を聞いて、「そんな低次元の目標のために表現をするのか」「誰にどうおもわれようと関係ないのではないか」などと反対意見を述べるのは、さみしいことだとわたしはおもう。 それまでの庵野さんは、自分がアニメ制作者であることを恥じ、たまたまどこかの飲み会に参加したときに職業を訊かれたりすると、会社員ですなどとごまかしていた。このままではいけない。友だちに呼ばれた飲み会で、ぐうぜんとなりの席に座った、CLASSYを読んでそうなコンサバOL(26歳)にもちゃんと説明できて、なおかつ「見たらぜったいおもしろいから、今度見てね!」と胸をはっていえるアニメを作る。それが庵野さんの目標だっ

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    F-name 2009/03/21
  • 会社の人たちが仕事でメールを使ってくれない - 空中キャンプ

    わたしの悩みは、会社の人たちが仕事でメールを使ってくれないことである。けっこう重要な伝達であっても口頭で指示がくることがほとんどだ。よってすべてこちら側でメモを取って復唱しないといけないし、なにより口頭なので記録が残らない。トラブルが発生したさい、言った言わない問題に発展する場合も多く、対策として、伝えられたことを箇条書きにまとめたメールを送り返して記録を残すようにする*1など、ほんらいであれば相手がやるべき仕事をこちらが引き受けるかっこうになってしまって実にめんどうである。これはどうにかならないものかしら。 それでも、伝達があるていど的確であれば、口頭でもかまわない。「やってもらいたいことは3つ。これとこれとこれ。期日はいつまで。よろしく」といったぐあいであれば、まちがいも起こりにくいし、こちらとしてもわかりやすく、すぐに取りかかれる。しかし、なんでも口頭で伝える人というのは、おおむね「

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    F-name 2009/02/03
  • 神の子どもたち - 空中キャンプ

    渋谷駅前の交差点、路上に設置されたスピーカーから流れてくるのは、いくぶん抑揚に欠けた男性の声で、その声は「キリストを呼び求める人は救われます」と何度も繰り返していた。たくさんの通行人が行き交う年末の渋谷。強風で、外は寒い。信号待ちをしながら、わたしはふと気がついた。「キリストは罪を赦し、永遠の命を与える」──そう書かれた看板を持って立っていたのは、小学校五年生くらいのちいさな女の子だった。 われわれは親を選択することができない。どのような親のもとに生まれるのかを選び取ることができない。両親は、彼らにとって「善きこと」を子どもに伝えようとするし、そこにはそれぞれの親の価値観が大きく関係してくる。それはときに宗教であったり、ある種の思想であったりもする。親は「善きこと」を子どもに伝える。それはあたりまえのことで、他人があれこれと口をだす問題ではないのだとおもう。 両手でしっかりと看板を支えなが

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    F-name 2009/01/01
  • 「問題は、躁なんです」/春日武彦 - 空中キャンプ

    春日武彦新刊(光文社新書)。うつ病とくらべて、注目されることのほとんどない「躁(そう)病」。わたしも躁病のことはあまり知らなかった。おもしろ人間の観察がライフワークとなっている春日が、怖いもの見たさと好奇心まるだしで書いた一冊。春日の解説を通して、躁病の実際を知ることができた。医学的な解説というよりは(春日は精神科医である)、躁病を通して人生のもの悲しさをふと感じさせる、味わいぶかいエッセイのような趣もあり、春日ファンのわたしはたいへん満足でした*1。 春日によれば、うつ病が「心のかぜ」なら、躁病は「心の脱臼」だという。あり得ないぐあいに関節が曲がり、糸の切れた操り人形のような途方もない動きを示す脱臼のような症状。心の箍(たが)が外れ、秘められていたあらゆる欲望が全開となり、自己抑制がゼロになり、見る者に異様な印象を与える。うわっ、なんだこの人は。このに書かれた躁病の症例をひとつひとつ読

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    F-name 2008/10/15
    鬱と比べて躁状態が問題になるのは少ない。何故だろう?
  • アイコ六歳 - 空中キャンプ

    私はマクドナルドべたことがない。音羽から竹橋へと向かういつもの帰り道、目白通りをゆっくりと走る車の窓から、赤地に黄色で大書きされたMの文字を眺めては、あれはいったいどんなべものなんだろうと考えを巡らせる。ガラス越しに見える店内には、座りごこちのわるそうな椅子や、いくぶん安定性に欠けたテーブルがあって、たくさんの子どもたちがハンバーガーをべたり、おまけについてきたプラスチックのおもちゃで遊んだりしている。そんなようすを見ていると、なんだか自分だけが取り残されたような気持ちになってしまう。私にはまだ知らないことがたくさんあるのだ。 私に会った人はみな、ずいぶんしっかりした話し方をする子なんですね、という。それがなんだかちょっと癪にさわる。もっとばかみたいな口調で話すとでもおもっていたのかしら。自分でこんなことをいうのもおかしな話だけれど、私ほど「自分は何者であるか」について考え抜いてき

    アイコ六歳 - 空中キャンプ
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    F-name 2008/03/17
  • かしゆかより志ん生の方がかわいいよ - 空中キャンプ

    かしゆかってどんな子なのだろう。わたしはかしゆかに興味があったが、問題はかしゆかのことをあまりよく理解していないという点である。どの子がかしゆかなのか。Perfumeには、「髪のみじかい子」「ストレートのロング」「いつもかっぽう着の子」の三人がいることをわたしは知っていたが、かしゆかがいったいどの子かはよくわからない。あの、つねにかっぽう着、もしくはマタニティードレスふうの服を着ている子なのだろうか。 かんたんな調査の後、かしゆかは「ストレートのロング」であることがわかった。決め打ちでかしゆかファンになったわたし。かしゆかがどの子かも知らないまま…。しかし、誰かを好きになるというのは、えてしてそういうものだ。われわれは、相手の人間性など知らないまま、誰かに恋愛感情を抱き、事後的に相手について学習してから、過去の行為や感情をあらためて意味づけし直すことができる。過去は可塑的であり、観察者によ

    かしゆかより志ん生の方がかわいいよ - 空中キャンプ
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    F-name 2008/03/07
  • なぜ福袋は売れるのか - 空中キャンプ

    初売りのセールで働いている、アパレル関係の方たちの意気込みにはすごいものがあり、たしかに2日から仕事ともなれば、あのテンションじゃなきゃやってられないのだろうし、一年でいちばん忙しい日だからこそ、販売員の魂にも火がつくのであろう。売る気まんまんである。「いらっしゃいませー」の声がいくぶん咆哮に近い。スクリーム。そうしてがんばっている人を見るのは、いかにも正月らしく威勢がいいものだ。デパートはどこも、ちょっとしたお祭りである。精算するのにも列ができていて、レジに辿りつくのに25分待った。を持ってきておいてよかった。 しかし毎年の疑問ではあるが、なぜ福袋はあれほどに人気なのだろう。たいていどの店も福袋を準備しており、開店早々になくなっていくのだが、中身がなにかわからないものに対してお金を払うというのも、考えてみればふしぎな話だ。そんなあやしげな商売の手法が、正月限定で成り立っているのである。

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    F-name 2008/01/04
  • 2007-12-23 - 空中キャンプ

    みなさんお元気ですか、空中キャンプを書いている者です。 さて、みなさんの2007年はいかがだったでしょうか。わたしはさほど変化のない、いささか地味な一年でしたが、それはいいことなのかも知れません。よくもなし、わるくもなし。その、プラマイゼロ感が。もちろん、07年が節目になった方もいらっしゃるでしょうから、そうした方はさらに上昇していっていただきたいです。わたしも、来年はちょっとだけしあわせをつかみたい。しあわせは、なにげに手にいれたいね。 さて先日、07年の映画についてのアンケートをおねがいしました。それらをもとに、今年の映画でいちばんおもしろいのはなんだったのか、ふりかえってみたいとおもいます。あらかじめ、みなさんにおねがいしたアンケートは、このようなフォーマットでした。 名前(id、もしくはテキトーな名前)/性別 2007年に劇場公開された映画でよかったものを3つ教えてください 2で選

    2007-12-23 - 空中キャンプ
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    F-name 2007/12/23
  • 空中キャンプ - 禁止されること、後悔すること

    わたしは映画を見るために、よく歌舞伎町へいくのだが、あのあたりには三店のマクドナルドがあって、いつもたくさんの人が並んでいる。きっと、テイクアウトしたハンバーガーを映画館に持ち込むのだろう。看板に書かれた、赤地に黄色のMマークをなんとなく眺めながら、あのふしぎな国際企業について、わたしはいろいろと考えていたのだった。マクドナルドってへんな会社だよな。というのも、誰ひとりとして、マクドナルド製品が「健康的である」とは認識していないからである。あの店に並んでいる人はみな、これから口にする品がからだによくないことをじゅうぶん承知している。ことによると、マクドナルド社は、自社製品が「からだに悪い」と認識されることを、むしろ「ビジネス的にはプラスである」ととらえてはいないだろうか。なんだかそんな気がしたのである。 アルコール中毒者のための自己診断には、このような項目がある。「今までに、自分の飲酒に

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    F-name 2007/12/15
  • 空中キャンプ - あたりまえのこと 2007-09-20

    いぜん、心理学者の岸田秀が書いたエッセイを読んでいて、とてもおもしろいとおもったのは、彼がまだ若かったころ、ある日「世の中にはつまらないがある」という事実を発見した、という文章だった。岸田は、この世の中につまらないがあるなどとはかんがえもしなかったのだという。かわりに岸田はこうかんがえていた。というものが、人手と時間をかけて作られている以上、その中には有意義な内容が込められているに決まっている。出版社がわざわざ印刷をし、書店に並べるからには、もちろんその中身はしっかりと吟味されているはずだし、無内容な、つまらないを、手間をかけて出版するなどということはありえない。どんなでも最後まで真剣に読み通す習慣のあった岸田青年は、かたくなにそう信じていたわけだ。 ところが岸田は、あるタイミングで発見してしまう。この世界には、つまらないというものがあると。読んでもいっこもいいことがない、た

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    F-name 2007/09/21
  • 空中キャンプ - 2007-09-15 ■怒りながら笑う人

    わたしは、怒りの感情が弱い。喜怒哀楽と感情あるなかで、怒のバランスがかなり低いのである。もちろん、頭にくることはしょっちゅうあるのだが、怒りがうまく持続しないし、なんだか途中からは疲れてきちゃって、わりとどうでもよくなって寝てしまう。だから、ものごとに取り組むさいの動機づけとして、怒りをうまく利用できない。「ちくしょー、頭にきたぞ。こうなったら、誰にもまねできないような、なにかすごいことやってやる」という気持ちで、ものごとへ向かうことができない。 負の感情を動機づけにする、というのは、もちろんわるいことではない。ヒップホップがその代表例だ。生まれた環境や差別、貧困などの経験を、表現に昇華させる。かかる表現が広く受け入れられたのは、やはりそれがリアルだったからで、怒りをきちんと表現の域にまで持っていけた人たちもたくさんいる。しかし、正直なところわたしは、「怒ってるラップ」にそれほどなじめなか

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    F-name 2007/09/16
  • あらたなる声明 - 空中キャンプ

    「あのさー、もうすぐ声明だすことになったから」と、彼はいった。世田谷区のせまい1Kアパート。オリジンのバランス弁当をおいしそうべながら、かたわらに置いた2Lペットボトルの烏龍茶を、直で飲んでいる。彼と一緒に暮らしはじめて二年。すっかり日にもなじんでしまった。「俺、日人に生まれたらよかったな。日、ごはんうまいし、女の子かわいいしさ。男は、サウジアラビアの方がイケてるとおもうけど。サウジアラビアって服とかカッコわるいしねー。俺も学生服着たかったよ。そいで学生服デートするの。あはは」。僕は、声明のことが気になっていた。 「ちょっと、声明ってなに」と僕は訊いた。二年前、彼を居候させる条件はふたつあった。ひげを剃ること。そしてテロをやめること。タフな交渉の末に、彼はひげを剃り、テロをやめると約束した。じっさい、今の彼はテロとは無縁の生活を送っていた。ふたりでタイフェスティバルにいってグリー

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    F-name 2007/09/12
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