この記事の写真をすべて見る 「キャンセル・カルチャー」という言葉を知っているだろうか? 著名人の発言を問題にして、不買運動を起こしたり、番組から降板させたり、講演会を中止させようとするなどの動きを指す言葉で、近年の欧米で頻繁に使われるようになったものだ。 『歴史なき時代に』(朝日新書)などを刊行し、世論に忖度しない発言で注目を集める歴史学者・與那覇潤氏が、自身がキャンセルされた近日の体験を踏まえて、流行の背景にあるネット社会の病理を分析する。 * * * ■「社会的制裁」との違いとは ひょんなことから話題のキャンセル・カルチャーなるものを、私も体験することになった。 「話題の」といっても、日本の一般の読者にとってはまだ耳馴染(なじ)みの薄い用語かもしれない。主に英米圏で燃え盛っている、「政治的に正しくない」と認定された言論や表現(たとえば人種差別的だとされたものなど)を追放して、人々の