「目玉が欲しいんですが」 金髪頭のサルガオーが言った。 新宿の片隅、壊れかけたビルの4階にある、妙な煙に溢れた小さなバー。 異国の民で満席だった夜。20xx年、春のことだ。 「目玉なら、ほら、目の前にあるじゃないですか」 全身を黒のトライバルに染めた男、クロマクが、 カウンターの上に乗った皿の中の丸いドロリとしたブツを指差す。 「クロマクさん、よしてください。ご承知でしょう? あたしが言ってる目玉ってのは、こういう喰えるやつじゃありません」 「わかってますよ、もちろん」 クロマクはその晩、二枚の手札を持参していた。 どちらも「目玉」と呼ぶに相応しい破壊力を持つ凶々しき存在。 はたしてサルガオーのブツは、こいつらの圧力に負けないだけのものか…… クロマクの心の中で愉しみと諦めが明滅する。 「じゃあご開帳といきますか」 言うが早いか、サルガオーは 皿の中の丸いドロリとした目玉を口の中に放り込み