日本のタイポグラフィ史の紹介本、とくにアカデミックな研究書では、おそらくほとんど触れられたことがないんじゃないか、と思われる本を二冊。いずれもすでに伝説化しているようで、復刊リクエストの声も多いようだ。 ●カエルの死 夢枕獏著/光風社出版/1985年1月刊 ISBN4-87519-470-6 殺人的写植張り込み:岩本和夫 小説家・夢枕獏のデビュー作としてつとに有名。ただし小説本ではない。では何の本か、というとちょっと説明に骨が折れる。著者は「タイポグラフィクション」と命名しているのだが、要するに写植(写真植字)文字をグラフィカルに使って何らかのストーリーを表現しようという試みだ。 本書には「タイポグラフィック漫画(コミック)」「タイポグラフィック物語(アクション)」「タイポグラフィック詩編(ポエム)」「タイポグラフィック音楽(ジャズ)」「タイポグラフィック童話(メルヘン)」の5ジャンル、計