写真植字機の発明略史(1)先鞭をつけた日本の写植機 写真植字機は世界中で日本で一番早く実用化された。この事実は日本の印刷関係者なら知らないひとはいないだろう。それも大正の末期から昭和のとっかかりのことである。すべての工業技術と製造機械が「西洋」から輸入されるか、その西洋から入った機械を模範にして、国産化された機械と、それを使う技術に依存していたこの古い時代に、ひとり、写真植字の機械だけが日本で全く独創的に開発され、先進諸国にさきがけて実用化されたということは、わが国の産業機械全体を見渡しても、非常に稀有の事例に属する。 しかも、この日本の写真植字機は、その以前に長い先人たちの苦闘の歴史があったわけではなく、突如として発明者の頭に宿り、その着想が具体化したものである、という点でも発明史上珍しいケースに該当する。 星製薬会社で働いていた青年森沢信夫が、会社の人からイギリスの写真植字機(
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