地下トンネルに潜んでいるとみられた人物は、崩れかけた建物の2階にいた――。イスラエル軍は17日、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスの最高指導者シンワル氏の殺害直前とされる動画を公開した。無人機(ドローン)で撮影された動画には、カメラを凝視する人物の姿が映っていた。 公開された映像は47秒。ドローンは壁の壊れた建物の2階に入り、がれきが散乱した部屋の内部を映し出す。奥にはほこりまみれのソファが並び、その一つに、布を顔に巻いた人物が腰掛けている。
未来技術遺産に登録された書籍「河氷特に氷上軌道に関する研究」。「極秘」という判が押されている=名古屋大提供 国立科学博物館(東京)が9月、次世代に引き継ぐべき未来技術遺産として登録したのは、太平洋戦争前夜に作成された「極秘資料」だった。その原本を約30年前、古本屋で探し当てた名古屋大環境学研究科の西澤泰彦教授(64)=建築史=は「戦争に向かう日本を知る歴史的資料」と話す。 未来技術遺産(正式名・重要科学技術史資料)に登録されたのは、旧日本軍が太平洋戦争に突入する4カ月前の1941年8月、南満州鉄道(満鉄)が作成した「河氷(かひょう)特に氷上軌道に関する研究」と題した書籍だ。 39~41年、冬季に凍結した河川上に鉄道軌道を通すため、氷の特性、氷に対する荷重試験、列車通過時の氷への影響などを調査した結果が記されている。写真も多数掲載され、617ページに及んだ。当時は300部の限定で印刷し、配布
市民の見守る中、模擬戦闘で空包を撃つ74式戦車=京都府宇治市の陸上自衛隊大久保駐屯地で2022年5月29日午後0時5分、鈴木健太郎撮影 有事に自衛隊の戦闘継続能力(継戦能力)を高めるため、防衛省は組織改編などで不用になった陸上自衛隊の装備品を廃棄せず、必要に応じて再利用できるよう整備・保管する新規事業を計画している。2025年度予算の概算要求に関連予算7億円を盛り込んだ。今春一線を退いた「74式戦車」が保管される予定。 ロシアによるウクライナ侵攻では無人機などハイテク兵器が注目される一方、戦況は消耗戦の様相を呈し、旧式兵器や弾薬、補給品などを確保しておく重要性が浮き彫りになった。日本政府は22年末に閣議決定した国家防衛戦略で「弾薬、燃料、装備品の可動数といった現在の自衛隊の継戦能力は、必ずしも十分ではない」と明記した。 陸自は冷戦終結に伴う部隊編成や主要装備の見直しの一環として、戦車を約1
大正時代、台湾人で初めて東京美術学校(現・東京芸術大)に入学した彫刻家の黄土水(こうどすい)(1895~1930年)。その代表作である彫像「甘露水」(1919年)が母校、東京芸大に里帰りする。「台湾のビーナス」とも称される傑作は、戦後の台湾で姿を消し、幻の存在となっていた。その「発見」に尽力した台北教育大北師美術館創設者で総合プロデューサーの林曼麗(りんまんれい)氏が、その秘話を毎日新聞に語った。 台湾人初の帝展入選 黄は台湾の日本統治が始まった1895年、台北に生まれた。台湾総督府国語学校(現・台北教育大)で木彫の才能を認められ、1915年、台湾人で初めて東京美術学校彫刻科木彫部に入学した。高村光雲に師事しつつ、自ら西洋の大理石彫刻を学んだ。 黄は故郷の「台湾」を強く意識し、作品に込めていく。台湾を自らのアイデンティティーに結びつけ、芸術で表現した先駆的な存在となった。 「甘露水」戦後、
東京都東大和市役所で、特定の男性職員について、同僚らが「後頭部がすずめの巣」「一緒にいるのが不快」などと共有ファイルに書き込み、職場内で閲覧できる状態だったことが分かった。【松山文音】 「職務に関係のない書き込み」 「つながる毎日新聞」への情報を基にした取材で判明した。 市や関係者によると、2020~22年ごろ、市の部署で、同僚らが男性の業務の進み具合などを共有のエクセルファイルに書き込み、上司の課長に報告する仕組みがあった。 ファイルは、男性をイニシャルで表し、「反応・言動」「不足能力」など複数のタブに分類されていた。 そして、「気になる言動や態度等」のタブに、「後頭部がすずめの巣」「ポロシャツの裾の下から下着が見えていて気持ち悪い」として、容姿をやゆする書き込みがあった。「一緒にいるのが不快」との記載もあった。 偶然、ファイルの存在を知った男性は「市ハラスメント処理委員会」に申告。委員
日本将棋連盟は19日、2024年度奨励会入会試験で竹内優月(ゆづき)女流2級(13)=中学2年=が6級で合格したと発表した。現役の女流棋士が奨励会試験に合格するのは、11年5月に奨励会入りした福間香奈清麗(32)以来13年ぶり。女流棋士として活動を続けながら、9月から奨励会でも対局を重ね、プロ棋士の条件である四段昇段を目指す。 竹内女流2級は東京都中央区出身で武市三郎七段門下。24年3月に中学1年で女流棋士となり、通算成績は4勝3敗。将棋連盟を通じ、「正直なところ合格できると思っていなかったので、とても嬉(うれ)しく思っています。ここからがスタートだと思うので、これから更に強くなっていけるよう精進して参りたいと思います。これからも応援宜(よろ)しくお願い致します」とコメントを出した。 奨励会の6級合格にはアマ三、四段の実力が必要となる。規定の成績を収めると段級が上がり、1級、初段を経て最高
自民党の小泉進次郎元環境相(43)は、9月に予定される党総裁選に立候補する意向を周囲に伝えた。複数の党関係者が20日、明らかにした。総裁選では小林鷹之前経済安全保障担当相(49)が19日に出馬を表明した。40代の総裁選候補が2人も出馬するのは異例で、党の「世代交代」も争点に浮上しそうだ。一方、石破茂元幹事長(67)は24日に地元の鳥取県で、河野太郎デジタル相(61)は26日に出馬表明する方向で最終調整に入った。 自民関係者によると、小泉氏は自民中堅に「総裁選に出る。長く一緒にやってきたから、ごあいさつだ」と出馬の意向を伝えた。また、別の「ポスト岸田」候補からの支援要請に対しては「総裁選に出るから応援できない」と断ったという。党ベテランには「出る準備をしている」と意欲を伝えた。 小泉氏は出馬について「真剣に考えて判断をしていきたい」と意欲は示しつつ、明言を避け続けている。党幹部は「今回の選挙
コメが各地で品薄状態となり、価格が高騰している。ほぼ100%国産なのに、なぜこんな状況に陥っているのか。元農水官僚の山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹に「令和の米騒動」の内幕を尋ねると、消費者をないがしろにしたコメ政策の実態が見えてきた。【聞き手・宇田川恵】 凶作ではなかった ――コメの品薄や価格高騰はなぜ起きているのですか。 ◆昨年の猛暑による不作やインバウンド(訪日外国人)の増加でコメの消費が増えたためだと言われていますが、両方とも主要な原因ではありません。 そもそも2023年産米の場合、コメの出来具合を示す「作況指数」は101で平年並みでした。「平成の米騒動」を招いた1993年産米の作況指数は74。23年産は特に高品質のコメが不作で、消費者が欲しがるコメが減ったからだとの見方もありますが、凶作だったわけではありません。 一方、インバウンドの消費増もそれほど大きいとは言えま
カレーライスの調理費用が過去10年で最高値に――。 帝国データバンクは13日、材料費や水道光熱費を加味して独自に算出した6月の「カレーライス物価」が1食あたり329円(前年同月比30円増)に上り、2015年以降で最も高くなったと発表した。 最近の物価高を、手ごろでおいしい食卓の味方に凝縮させて示したユニークな指標で、同社は7月に高値のピークを迎えると予測している。 総務省の「小売物価統計調査」を基に算出した。 具体的には、市販のカレールー半分▽ニンジン▽ジャガイモ▽タマネギ▽輸入牛肉▽ご飯(銘柄はコシヒカリ)▽食用油――を使って6食分を調理したとの想定。炊飯器でご飯を炊くための水道光熱費も計算に入れた。 その結果、6月の1食分の内訳は、肉や野菜といった具材が203円(前年同月比20円増)▽ご飯が97円(同8円増)▽カレールーが25円(同1円増)▽水道光熱費が4円(同増減なし)――となり、計
イラストレーターの花邑(はなむら)まいさんの元に、女性漫画家の代理人弁護士から「通知文」が届いたのは2019年6月のことだった。 「作品が花邑さんにトレース(なぞり書き)されている」 初めは、すぐに解ける誤解だと思っていた。しかし、事態が訴訟に発展し、仕事も失うはめになるとは想像だにしていなかった。 無料メルマガ「裁判Plus 司法のリアル」が配信開始。登録はこちらから 女性漫画家から覚えのない指摘 花邑さんは美術系の短大を卒業後、入社したゲーム制作会社でデザインを担当。13年にフリーのイラストレーターへ転身した。トラブルに巻き込まれたのは、画集も発売し、順調なキャリアを歩んでいた頃だった。 女性漫画家から届いた通知文には、花邑さんが描いたゲームのキャラクターのイラスト300点以上を検証したとあり、線の重なりといった女性漫画家の作品との類似点が挙げられていた。 アニメやイラストの世界で、他
山本槌造の家は茶や谷の川にかかる竜王橋のたもとに今も建つ=高知県檮原町で2024年7月21日、井上英介撮影 井上英介の喫水線 土佐湾を望む高知県須崎市から上り坂が続く。目指すは同県檮原(ゆすはら)町。四国山地で愛媛県と接する。車は非力な軽のポンコツで、エンジンが焼けそうだ。 目的地の「茶や谷」(同町四万川(しまがわ)区)は高知県でも有数の標高が高い集落だ。坂本龍馬は1862年に土佐を脱藩する際、茶や谷から韮(にら)ケ峠を越え伊予へ抜けた。その約80年後の1941年、33歳の壮年が脱藩ルートを逆にたどり、峠から茶や谷へ下りてきた。柳田国男らと並ぶ民俗学の巨星、宮本常一(つねいち)だ。日本じゅうを旅し、地域の古老たちに話を聞いて膨大な記録を残した。彼は茶や谷で一人の老人から生い立ちを聞き取り、戦後に公表した。宮本の代表作「土佐源氏」である(岩波文庫「忘れられた日本人」所収)。 老人は盲目で橋の
長崎市で9日に開かれた平和祈念式典に、米欧6カ国と欧州連合(EU)の大使が出席を見合わせた。パレスチナ自治区ガザ地区で戦闘を続けるイスラエルが招待されなかったことを受けた措置だが、どのように考えるべきなのか。有識者に聞いた。 篠田英朗・東京外大教授(国際政治)の話 米欧諸国は今回、イスラエルが招待されなかったとしても、粛々と平和祈念式典に参加するという選択肢もあったはずだ。式典に参加したからといって、イスラエルが怒るとは考えづらい。 だが米欧は、日本との外交関係を悪化させるリスクがあっても、大使を欠席させることを選んだ。日本はこれまでG7(主要7カ国)の連帯を重視し、米欧が求めるウクライナ支援に大きく貢献してきた。今回の米欧の政治判断はとても妥当だったとは言えない。 米欧は欠席の理由とし…
福岡俘虜収容所第14分所の跡地から見つかったコンクリート製路盤やれんが積みの基礎=長崎市が2022年4月8日に撮影(「養生所を考える会」提供) 長崎市幸町の複合施設建設地で、長崎原爆投下時に爆心地の南約1・7キロにあって全壊した捕虜収容所の基礎の遺構が2022年に見つかっていたことが市などへの取材で判明した。市は「原爆被害を伝える遺跡とは認められず、保存対象ではない」と判断し、遺構は保存されなかった。病死や被爆死した捕虜も多く、市民による慰霊行事などが催されているが、市は遺構発見を公表しなかった。捕虜の遺族らと交流する市民団体は「市民や遺族を巻き込んで保存・活用を議論すべきだった」と市の判断に疑問を投げかけている。 収容所は、福岡俘虜(ふりょ)収容所第14分所。長崎市が発行した「長崎原爆被爆50年史」などによると、第二次世界大戦中の1943年に開設され、南方の戦線から移送された旧連合国のオ
「何の前触れもなく、木造2階建ての店舗兼自宅が更地になってしまった。商売道具を取り出すこともできず、何もかも失ってしまった」 自営業の男性=石川県輪島市=は7月下旬、店舗兼自宅跡地を前にそう嘆いた。寝耳に水だったという。何が起きていたのか。 男性は、市内で約40年間はんこの製造や販売をしてきた本郷明夫さん(69)。象牙などの高級印材も手がけていた。 全壊で市に解体を申請 だが、今年元日の能登半島地震で市内は震度7の揺れに見舞われ、本郷さんの店舗兼自宅は1階部分が完全に潰れてしまった。市からは「全壊」と認定された。 このため、本郷さんは春ごろ、損壊した家屋を自治体が解体処分する「公費解体」を市に申請した。 解体に当たっては、事前に解体業者と費用を見積もるコンサルタント業者と面談することになっている。本郷さんは6月末に面談し、こう伝えていた。 「はんこの材料や道具が1階にあるので取り出したい。
大和郡山市が代執行で取り壊す方針を決めた建物=大和郡山市で2024年7月30日午後2時16分、熊谷仁志撮影 奈良県大和郡山市は、明治期の県内公認遊郭4カ所の一つだった同市東岡町に残る象徴的な木造3階建ての建物(延べ約416平方メートル)を、空き家対策特別措置法に基づく「特定空き家」に認定し、年内にも行政代執行で取り壊す方針を決めた。近鉄郡山駅に近く、かつて遊郭として栄えた地域の隆盛をうかがわせる大型建物で、風化して朽ち果てていく様子を撮影するマニアらが訪れるスポットだった。 市が29日、ホームページで解体を担当する業者を公募で選ぶことを公表した。市としては初の空き家解体の代執行で、費用の上限は1700万円と設定。12月27日までの解体完了を求めている。
日本の霊長類研究を憂う元京都大霊長類研究所長の杉山幸丸名誉教授=愛知県犬山市で2024年6月13日午前11時46分、川瀬慎一朗撮影 国内外の霊長類研究をリードしてきた研究施設「京都大霊長類研究所」(愛知県犬山市)。研究費不正問題で2021年度末に“解体”されるまでの経緯をまとめた論文が、かつて所属した研究者らにより発表された。責任著者で元所長の杉山幸丸・京大名誉教授(89)=霊長類生態学=は「日本科学史の汚点だからこそ、しっかり記録しなければならない」と話している。 杉山氏らがまとめた論文「霊長類研究所解体の経緯を考える」は、霊長研が消滅するまでの経緯を裁判記録や公的資料を精査し、分析している。4月に科学技術振興機構(JST)が開設するサイトで公開したほか、海外研究者の注目も高いため6月には国際霊長類学会の学会誌(ウェブ版)にも掲載した。 霊長研は1967年に設立され、野外研究と実験室研究
滋賀県高島市の琵琶湖湖岸で県の許可を受けずに盛り土をして約70メートルの通路を作ったとして県は3日、行為者1人を河川法違反の疑いで滋賀県警高島署に告発した。 県によると、3月15日、高島土木事務所に「琵琶湖に道ができている」と匿名の通報があり、同事務所の職員が同市安曇川町南船木の琵琶湖湖岸で県の許…
国産みかんの配合率を増やして「みかんオレンジジュース」とパッケージがリニューアルされた「ポンジュース」のラインアップ=松山市で2024年5月28日、鶴見泰寿撮影 えひめ飲料(松山市)が製造する「ポンジュース」のパッケージが4月にリニューアルされ、「オレンジみかんジュース」から「みかんオレンジジュース」に表記が変わったのはご存じだろうか? 「オレンジ」と「みかん」はなぜ入れ替わったのか。その背景を探ると、国産みかんを巡る残念な「真実」とともに、意外な「チャンス」も見えてきた。【鶴見泰寿】 「救世主」として期待が高まる国産みかん。しかし…… オレンジとみかんはなぜ入れ替わったのか。その謎を解くため、記者はまずえひめ飲料へ向かった。取材に応じた越智俊介・総合戦略部長は、ブレンドしていた輸入オレンジ果汁の価格高騰もあり、国産みかんの配合を増やしたため、両者の「位置」を入れ替えたと説明した。背景にあ
不二家のマスコット「ペコちゃん」が描かれた看板のある牧場=北海道八雲町で2024年6月10日午後2時33分、貝塚太一撮影 オーバーオール姿で舌を出す、誰もが見たことのある不二家の「ペコちゃん」と北海道南部の八雲町に浅からぬ縁があることをご存じだろうか。2030年に生誕80年を迎えるのに合わせ、町に「ペコちゃん牧場」をつくる相思相愛の計画も進んでいるが、暗雲が垂れこめている。国民的キャラクターの身に何が起こっているのか。 JR札幌駅から函館方面に特急で約2時間40分。全国で唯一、太平洋と日本海に面する八雲町は牧場が広がり、乳牛が1万1000頭以上いる「酪農の町」だ。街中にはホルスタイン柄のベンチが置かれ、ミルクロードと呼ばれる、牛舎が連なる道もある。 不二家の主力商品ミルキーに使う練乳は全て道南の生乳を原料にしており、そのうち約4割は八雲町産だ。「安定した良質な生乳」(不二家広報)として、長
河野太郎デジタル相は14日の閣議後の記者会見で、撤廃を進めてきた「アナログ規制」のうち、法令などでフロッピーディスクの提出を求めていた行政手続きが6月中に全廃されると明らかにした。 フロッピーディスクをはじめとするアナログの行政手続きは、河野氏が2022年8月のデジタル相就任直後から問題視し、撤廃に着手。英BB…
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