私は、もちろん自分が手品師だとは思っていないが、私が創造しようとする空間は解読できない空間であり、ひとが目で見ているものの精神的延長となるような空間でもある。 ジャン・ヌーヴェル──『les objets singuliers 建築と哲学』より*1 パリで最も魅力的な建築──魅力的な建築がある場所──の一つであるアラブ世界研究所*2。フランスの建築家ジャン・ヌーヴェル(Jean Nouvel、b.1945-)により設計、1987年に開館した。特徴的なアラベスク文様は、カメラの「絞り」(ダイアフラム)と同じメカニズム=装置が採用され、外光を自動調整する。セーヌ川に面した側はガラスの曲面ファサードになっている。イスラム文化、イスラムのアイデンティティを建築によって体現したと評価され、西欧圏でありながら、アガ・カーン建築賞*3を受賞した*4。 ところで、ジャン・ヌーベルはアラブ世界研究所でも見ら