今回の旅の狙いの一つは、モーパッサンの小説『ベラミ』の舞台を辿ってみることだった。この悪徳めいた小説の舞台はほとんどパリだからだ。 そんな気持ちで大韓航空の、まずはインチョン行きの飛行機に乗り込み、手持ち無沙汰を前の座席の背中についているビデオでごまかしているうちに大発見をした。なんと、なんと、上映予定の映画の中に『ベラミ』があるではないか。さっそく観てみる。幸いなことに、ハリウッド映画にもかかわらず、フランス語バージョンがあった。 インチョンからパリまでの約10時間の飛行中、なんどもこの映画を観たのは言うまでもない。 原作と比べると、映画は常にケチを付けられるものだが、この『ベラミ』、思ったよりもわるくはなかった。映像の中にモンマルトルの「サクレクール」が出てきたのにはビックリしたが、これはたぶん、観光的気分も盛り込みたいアメリカ映画だからだろう。モーパッサンの時代(1880年代)にはま