夕方、電話が鳴った。普段は勧誘などを避けるため留守電にしている。が、その日に限って設定されていなかった。ベルは長く粘る。本当に用事のある人かもしれない。恐る恐る受話器を持ち上げ耳にあてた。 「・・・もしもし・・・ですけど」 弱々しいというより、たどたどしい。だれだろう。ご老人だろうか。 結婚してから15年ほど続けていた習い事がある。そこの生徒は60代から90代がほとんどだった。あのときの誰かだろうか。 「もしもし・・どちら様でしょう」 「トンちゃん?あたし・・うき・・あの、高知の・・」 ああ! 「ふきちゃん?ふうちゃんでしょう!」 「そう!わかるぅ?」 息子が幼稚園の頃、SNS上で知りあった。彼女のブログに私がコメントを書いたことから付き合いが始る。しばらくして彼女はブログをやめたが、なぜか付き合いは続き、今でも毎年毎年彼女の畑で採れた作物や手作りの味噌を送ってくれる。私も東京から酒など送